喜連川風連

どぶ鼠作戦の喜連川風連のレビュー・感想・評価

どぶ鼠作戦(1962年製作の映画)
-
戦前の中国戦線で西部劇をやってみた独立愚連隊シリーズの3作目。痛快娯楽活劇映画。

「軍隊を飛び出したのは、軍隊の規律に嫌気が刺したからです!その代わりテメェの命はテメェで守らされてますがね。それでも自由が欲しかったんですよ」

人間の條件で狭く見えた中国大陸が岡本喜八監督にかかると雄大に見えるから不思議だ。

これまでの愚連隊シリーズを彩ってきた様々な要素が登場する。

佐藤允の「チキショウ」というセリフ、拳銃を使った一騎打ち、味方だと思ってた奴が敵になる展開、爆薬をふんだんに使った大迫力爆発のシーンなど見応え十分。

基本ストーリーは仲間と一緒に敵陣から重要人物を連れ出す隠密モノ。

仲間として選ばれたのは、脱走常習犯の林一等兵、食事を盗んだ兵を撲殺した空手三段の三好炊事軍曹、その軍曹を仇と狙って炊事場へ手榴弾を投げこんだ穴山上等兵、忍術研究中の佐々木二等兵の四人。

特に佐々木二等兵の珍妙な忍術シーンがたまらない。

映像編集も随所に喜八節が炸裂。シーンの終わりと始まりで同じ動きをつなげたり、大きい音で終わったと思ったら、別のシーンにパッと変わり、前のシーンの大きい音に驚いたかのように見える男が差し込まれたりと、編集がいよいよ円熟。

牢屋の格子越しに人物を撮影し、その人物の首が格子で切れてるように見える首斬りショットや、二つ穴の空いた穴から外を覗いた時、その前を左右に移動することで、移動を面白おかしく見せたりとこだわりが随所に見え、楽しい。

同時代の大島渚が、撮って出しのような手ブレと撮影ミスかのようなピンぼけ、ほぼアテレコの映画を作っていたが、小津や黒澤へのカウンターが目的になってしまっていて、後世の人が見ても面白くない。

自分は岡本監督のような職人監督がどうやら好きらしい。

独立愚連隊シリーズが毎年公開されるような時代も見てみたかった。
喜連川風連

喜連川風連