どぅぐ

ニュー・シネマ・パラダイスのどぅぐのレビュー・感想・評価

4.4
友達と三人で鑑賞した。

自分で作品を執筆しているせいか、
物語論ばかり読んでいるせいか、
はたまた、それ以外なのか、
理由は確かじゃないけれど、

主人公に感情移入するというのが最近苦手になりつつある。
こんなことをここに書く必要は全くないのだが、物語には必ず作者というのもが存在するわけで、その作者の作り上げた虚構に読者・視聴者は乗っかっているとどうしても思ってしまう。
だからいつも、映画を楽しむというより、勉強として見てしまう。その証拠として、自分はどれほど緻密に内容が作り上げられているかでしか映画を評価していない。


だが、この『ニューシネマパラダイス』は、そんな心の防波堤とでも言えるような壁を軽々と超えてくれた作品であった。
シリチアの波は穏やかだが、この作品の波は高さがあった。私は、久方ぶりに感情移入して楽しめたのだ。

とはいえ、数日経った今、冷静に考えてみると、構成と見せ方も上手かったなぁと、しみじみ。

冒頭、寂しそうにする親子の映像から入り、主人公の母と姉だと我々は分かる。
主人公は、どうして何十年も故郷に帰らなかったんだろう、冷たい性格なのだろうか、もしかして喧嘩別れでもしたのだろうか、等々、浮かんでくる疑問は多い。

だが、物語が進むと、そんな不安はいつの間にか、立ち消えていて、最後には温かい気持ちになっている。

子のいない村のお爺さんと父のいない生意気な子供が、映画という共通事項(映画用語で言えばマクガフィン)をきっかけに、友情と愛情を育んでいく物語。当時の映画というカルチャーがどう人々に扱われ、どう消費されていたのかも垣間見れてすごく良かった。

この作品、なんで、すっと身体に入ってきたのだろうとふと思った。
暫く考えた結果、主人公とお爺さんが血が繋がっていない、赤の他人だからだと分かった。これは、全くネタバレではないので、悪しからず。
エディプスコンプレックスという概念があるが、この作品が父と子の愛情物語だったら、ここまで感動していなかったかもしれない。

またエッセイみたいになってしまった。
どぅぐ

どぅぐ