かっぱさま

ニュー・シネマ・パラダイスのかっぱさまのレビュー・感想・評価

1.0
イタリアの田舎町を舞台に、映画好きの少年が映写技師の中年との親交の中で成長するさまと、人生における選択を描いたヒューマンドラマ。

「不朽の名作」として語られるわりに、抑揚のないストーリーと共感できないシーンで溢れている駄作。
つまらなすぎて終始眠いので不眠症の特効薬として使えそうなレベル。

本作は2時間半のイタリア上映版、2時間の国際上映版、3時間の完全版の3種類があるとのこと。
「初出はイタリア上映版だが人気が出なかったため、一部シーンをカットした国際上映版をリリースし成功を収めた」
との情報があったため国際上映版を視聴した。

ストーリーは至極平凡なもので、少年が映画館の仕事を通して成長し、恋をしたり挫折を味わったりというもの。
特に尖った要素があるわけでも、心に残る学びがあるわけでもない。悪い意味で普通。
田舎町で燻っている描写から序盤がややスローテンポであることは仕方ないにしても、中盤から急展開!という流れでもなく「いつおもしろくなるんだろう」と退屈な映像を見せられ続けた結果、特に盛り上がることもなく終わる。

最もヤバイのは、物語の転換上重要と思われる心理描写と状況説明が全くされておらず、なぜその展開になったのかが理解できないこと。

エレナがトトに惚れた理由がよくわからない。
(王女と兵士のお伽話はなんだったんだ?)

トトが映画館で働くことを母親が許した理由もよくわからない。
(絶対行くなって誓わされたんじゃねえのか?)

トトが中年になってどう成功したかも描かれてない。
(映画館のオーナー?かと思ったら監督?そんなのどこにも描かれてないけど)

アルフレードがトトを故郷から遠ざけた理由もよくわからない。
(トトが強い上昇志向を持っていたわけでもない。小さい頃から映画監督を目指してた描写もない)

全ての心理描写と状況説明をしろとは言わないが、転換に関わる重要なシーンは描いてくれないと感情移入が全くできない。
説明なしにいきなり感動っぽいシーンを持ってこられても、状況が理解できないのでついていけない。

結果ラストシーンも全く没入できないし、泣けない。
(序盤の「切ったフィルムはお前にやるが私が保管する」という伏線の回収なんだろうが、だから何なの?)

そのわりに大筋に直接関係ないと思われるシーンが多すぎる。
例えばフィルム交換のために隣町の映画館を自転車で往復するシーンなど。
いらないシーンが多すぎるので、テンポが異様に悪く感じる。
その結果観ているのが退屈だし、眠い。

音楽も印象に残らず、悪いわけではないが特段良くもない。

同じイタリア映画の「ライフ・イズ・ビューティフル」と同列で語られることが多いようだが、レベルが違いすぎて比べ物にならない。
あちらもそこそこ古い映画だが、前述のような描写不足とは無縁だし、細部までしっかりと描かれている。

最高に眠い映画で、作品単体として観る価値は全くない。
名作(と呼ばれるもの)をしっかりと観た上で「つまらなかった」と語ることができる、それが唯一の価値。
作中に映画館でいつも寝ているおじさんが登場するが、この映画を観てたというオチじゃないだろうか?