炭酸煎餅

透明人間の炭酸煎餅のレビュー・感想・評価

透明人間(1954年製作の映画)
3.4
1954年、ゴジラと同年公開の特撮SF映画。当然モノクロ。
ジャケットやポスターの画像のイメージから怪人物の怪奇サスペンスなのかな?と思って観始めたら全然違ってて、悲しい運命を背負った主人公が名誉と縁ある人々のために犯罪集団に挑む、哀愁に満ちた物語でした……。

この作品での透明人間は、全滅したとされていた特攻隊のただ2人だけの生き残り。彼らはもはや元に戻る術もなく、それでも東京の街でそれぞれ生きていたのですが、映画の冒頭はその1人が苦境に耐えかね、戦友へ宛てた悲しい遺書を残して遂に自ら命を絶ってしまう所から始まります。
同じ境遇の最後の戦友も失い、都会の隅でひっそりと暮らす、心優しき透明人間。
戦争で両親を亡くし、「治療費を稼ぐ」と夜勤仕事をする祖父と二人暮らしの盲目の少女。
タチの悪い経営者に束縛されて抑圧されるキャバレーの歌姫。
「ただ真実を知りたい、伝えたい」といい、記事は後回しにして捜査に協力する新聞記者。
そんな人々の姿を、"透明人間"を騙って凶行を繰り返す卑劣な強盗団が起こす事件を軸にからめて描いています。

70分という時間のせいか、展開にセリフで済ませてしまうやや駆け足な部分もありますが、戦後すぐという時代が反映されたドラマ性の高い作品だと感じました。
面白かったです。
炭酸煎餅

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