みてべいびー

レベッカのみてべいびーのネタバレレビュー・内容・結末

レベッカ(1940年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

“He just simply adored Rebecca.”
やっと観た。ゴシックホラーの傑作と言われてるからもっとおどろおどろしいのを想像してたけど、意外と人間ドラマというかサスペンスホラー色は薄め。でも撮影もライティングもマンダレー邸も本当に美しい、白黒フィルムってこうゆう映画のためにあると思う。
バンホッパー夫人の雇われ話し相手としてモンテカルロに来た主人公は、コーンウォールに豪邸を持つMaximと出会う。バンホッパー夫人がなかなかの癖モノなんだけど、ヒッチコック映画ってほぼ毎回こうゆう口うるさい感じのおばさんが出てくる気がする。彼女が病気の間仲を深めた二人は身分の差を臆さず電撃結婚。マンダレー邸で暮らし始めた主人公が、Maximの亡き前妻Rebeccaの影に怯えながらも彼の愛を勝ち取ろうとする物語。
観たあともRebeccaという名前が頭から離れなくなる。一貫して名前で呼ばれることのない主人公との対比が上手い。Rの刺繍がしてある彼女の持ち物たち、Rebeccaを崇拝し主人公を疎ましく思うメイドのダンヴァース夫人、何かにつけて彼女と比べたがる周囲の人々の好奇の眼差し。自分の居場所を見出せず、Maximの愛を感じられない主人公の葛藤がすごく丁寧に描かれてる。積もり積もっていくプレッシャーがJoan Fontaineの演技によく表れてて、冒頭の純真な彼女が夫を支える思慮深い女性に成長する過程がしっかり見える。Hitchcockの演出もすごいんだと思うし、Fontaineの演技も素晴らしい。Rebeccaの部屋案内して仮装舞踏会で主人公を罠にはめるあたりのダンヴァース夫人も恐ろしい、彼女の異常な執着が序盤でもう少し見えてもよかった気がするけど。彼女の最期は瞳の中の炎といい、「バニーレイクは行方不明」の兄貴の狂気を彷彿とさせた。
しっくり来なかったのは、Lawrence Olivier演じるMaximの表情があんまり変わらないからなのか、モンテカルロの下りが密じゃなかったからなのか、Maximの主人公への愛があんまり感じられないこと。もちろんだからこそ主人公は劣等感に苛まれるわけだし、そうゆう演出なのはわかってるんだけど、それでもRebeccaの死の真相を語る場面までずっと彼女との結婚の動機が不透明。”You really love me, don’t you?” とかって自分への愛を確認するだけだし、散々苦労させといて「私は幸せを知らない」発言するし、主人公を振り回しすぎなのでは?と思わずにいられなかった。最初から最後までMaximの魅力がわからない、多分そこが問題。
あとRebeccaの邪悪な本性を仄めかす場面がほとんどないまま、後半で一気にその事実を告げられるから少しついていけなくなる。なんならめっちゃ重要な事実なのに、全てMaximの独白で完結させちゃう感じがもったいない。おそらくそれまでも漠然とした形容詞でしかRebeccaの人となりを把握できてないから、「完全無欠の美人妻」のイメージとのギャップがすごくて混乱する。なぜ彼女がMaximをそこまで憎んでたのか、結婚してまでいたぶりたかったのかもわからない。金目当て?でも良い家柄の出じゃなかった?みたいな謎が残る。単にサディストでサイコパスだからとかっていう理由じゃ納得できない。でも全くスクリーンに登場することなく、ここまで強烈な影響力を持つfamme fataleは映画史上存在しないはず。
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