垂直落下式サミング

レベッカの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

レベッカ(1940年製作の映画)
3.8
庶民育ちのアメリカ娘が富豪の後妻として嫁ぐことになるが、イギリスのマンダレーにある彼の屋敷に行ってみると、なにやら歓迎されていない様子で…。アマプラで吹き替えヒッチコック。
撮影は、ノーブルでエレガントなパラノイア。女の語りとともに、じめっとした霧と闇の森を通り抜けていくと、廃墟の屋敷があらわれる。長回しのワンカットで、カメラが森の獣道を優雅に流れて、ファンタジーな世界の一歩手前まで吸い寄せられていくのは、現在のドローン撮影と遜色ないような、なかなかの映像トリック。当然、当時ドローンどころかハンディカムもない。ラストの炎上シーンも、どうやったんだろう?ってくらい壮絶。
めでたく貴族の嫁になる玉の輿。精神病を生み出す父権制社会。世間知らずお嬢さんのお屋敷での夢の新生活が始まるが、周囲の人にも物にも事故死した前妻の影が付きまとう。前妻のメイド頭みたいな女が恐ろしい。
予備知識ゼロで見たので、前妻の幽霊が登場するオカルトホラーかと思ってしまったが、その想像をはるかに上回る恐怖が襲ってくる。
「気に入ったから結婚するんじゃない。屋敷が広すぎるから寂しくて結婚するのよ。」羨ましいなー。もて余すくらいの大きいお家に住みたいし、どうせ結婚すんなら一秒たりとも寂しくなりたくない。そんでもって、愛してもらいたい。