天豆てんまめ

レベッカの天豆てんまめのレビュー・感想・評価

レベッカ(1940年製作の映画)
4.0
あれだけ多作、そして傑作が多いサスペンスの帝王ヒッチコックが生涯に一度、アカデミー作品賞を取った作品。

「サイコ」や「鳥」「北北西に進路を取れ」など有名作の方がエンタテインメント性と物語的インパクトがあるが、この「レベッカ」の完成度もまた素晴らしい。

主演女優のキャロライン扮するジョーン・フォンティーンは「風と共に去りぬ」のメラニー役のオリヴィア・デ・ハビランドの妹。

この姉妹は歴史上唯一各々がアカデミー賞主演女優賞を獲得した驚くべき姉妹だ。本作主演のジョーン・フォンティーンの方がよりソフトでかよわい美しさといった印象で、外見と雰囲気は私は妹の彼女の方が好き。メラニー役の姉は格調高い気品がいいのだけど。

ちなみに妹の彼女は「風と共に去りぬ」のオーディションも受けていて、メラニー役を希望したのだけど、姉が選ばれて、ショックのあまり死のうかとさえ考えていたという。

その後、本作「レベッカ」でヒッチコックの白羽の矢が立ち、次のヒッチコック作「断崖」でアカデミー主演女優賞を取ったのだけど姉妹の間は確執が強まって、5年後、逆に姉のオリヴィア・デ・ハビランドが「遥かなる我が子」で主演女優賞を取った時に、妹の彼女が祝福してハグをしようとしたら、公衆の面前で拒まれるという決定的モーメントがあり、修復不可能になった残念なエピソードもある😅

更に姉が「女相続人」で2度目のアカデミー主演女優賞を取った時、公けの場で祝うことも諦めたそう、、伝説の姉妹なのに、何だか哀しいものです。

物語は、ジョーン・フォンティーンが、ローレンス・オリヴィエ扮する英国紳士の富豪で妻を亡くしたばかりのマキシムに求婚され、彼の大邸宅に住むことになるが、そこには恐ろしい雰囲気の使用人ダンヴァース夫人がいて、ことあるごとに前妻のレベッカを引き合いに出して、彼女を非難して、精神的に追い詰められていく。


とにかくジョーン・フォンティーンが可哀相で、中盤からは前妻のレベッカが謎の水死を遂げていることやその真相、そして夫への疑惑に揺れ、などとミステリーが深まっていき、緊張感が続いていく。

あと、この大邸宅が実に気味が悪いのだけど、陰影豊かなモノクロ映像の美しさも相まって、作品に気品と風格を与えていると思う。作品賞と共にアカデミー撮影賞も獲得しているのも納得だ。

よくゴシック調という中世の雰囲気を醸し出す神秘的、幻想的な雰囲気の作品を指す言葉があるが、この作品はその雰囲気を存分に堪能させてくれる。と同時に普遍的な童話性があり、どこか懐かしい。

平凡な娘が王子に見初められる「シンデレラ」や夫が殺人鬼ではないかと疑う「青ひげ」の組み合わせとも言えるし、怖い使用人のダンバース夫人はまるで魔女のよう。

そうした誰の心にもある童話的記憶がゾクゾクと呼び起こされるヒッチコック屈指のゴシックロマン作品だと思う。