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去年マリエンバートでのfleurのレビュー・感想・評価

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)
4.8
周りが一切動かずに二人のみ動く場面、逆に周りが動くけど二人は動かない場面。ふたりとまわりは違う次元、違う時空に住んでいるよう。交差することのない世界。
サブリミナルのように差し込まれる真っ白な部屋の様子、長い沈黙。流れる音楽はずっとオルガン。懺悔か告解か。整えられた庭園は平面的で人々は絵画の中にいるよう。少しエッシャーの騙し絵みたい。生気のない人々がそこに佇む。弦楽の演奏を聴いているはずなのに、肝心の演奏は一切聴こえてこない。シャネルによる衣装がとても美しかった。リマスターもシャネルのサポートで行われたらしい。白い透ける美しいドレスはふわりふわりと揺れて幻のようでいて、どこか幽霊のようでもある。少しずつじわりじわりと進んでいるようで、これは今の話なのか去年の話なのか、昨日の話なのか今日の話なのか、はたまた明日の話なのか。なにもわからない。夢が現実か。境界線はとても曖昧で揺らめいていて、ずっと靄のかかった白昼夢のなかにいるよう。
Laissez-moi je t’en supplie.
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