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去年マリエンバートでのCookieMonsterのレビュー・感想・評価

去年マリエンバートで(1961年製作の映画)
3.7
去年マリエンバートで
出逢った記憶を語る男
覚えてないと言い張る女
執拗なまでに繰り返される会話
曖昧な記憶

沈黙が支配する広大な屋敷
死者のようにポーズする煌びやかに着飾った人々
途切れ途切れに聞こえる会話
そこはさながら虚飾の卓
パーティーのシーンはキューブリックのシャイニングを想起させる

基本的に作品で描かれる時間軸は現在進行形ではなく、主人公となる男の回想に過ぎないと思う
現在なのはたぶんラストシーンのみ
パーティーにいる人々がしばしばポーズするのは、それが男にとって意味のない記憶に過ぎず、途切れ途切れに聞こえる会話は、パーティーとはつまりそういうものだから
そこに大した意味性はなく、パーティーを添える付属物に過ぎない
繰り返される会話も結局その無意味性を補強する
そんななかで、男は去年マリエンバートで出逢ってしまった

作品にはゲームが得意な男が登場するけれど、彼は実在している人物というより女を他の男から遠ざける為のゲートキーパーに近いように思う
繰り返されるゲームは必ず2人で行われ、挑戦は必ず退けられる

去年出逢ったという2人の記憶も、1年後に会おうという約束も、それが事実なのかはわからない
回想に出てくる男女の服装は常に異なり、時間軸は判然としないが、これは記憶の特性を示していてそこにある物語性だけを覚えていて付属した記憶が判然としないともいえるし、男は“信頼できない語り手”として女を騙すための嘘をつき続けている証左だともいえる
問題は何が起こったか、それ自体ではなく、女が最終的に何を信じたか?という点だ

表現の独自性
ワンカットごとの構図の美しさ
構図を意識した俳優陣の徹底した所作
不穏な音楽
不条理にも見える物語を補強するようなそれらが作品の魅力それ自体だし、半世紀以上を経て、未だ衰えることのない作品
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