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鉄の男のmhのレビュー・感想・評価

鉄の男(1981年製作の映画)
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「(忘れ去られた労働英雄=)大理石の男」を追っかけた前作のテーマを引き継いで、今作では、その息子=現在の英雄(ならびに「連帯」)を追っかけるという内容。
前作では反政府的行動だけど興味があるから押し切ったというポジティブな追い方だったけど、今作はスト潰しの片棒を担がされる(体制側にいいように使われているジャーナリスト)というネガティブで対象的な動機づけになっている。
なにからなにまでクレバーですごいんだけど、話が面白いかといったらそういうわけじゃないのが映画の不思議なところ。
・タイトル似てるけど前作とは繋がっているのか。
・繋がってたらあのふたりはどうなったのか。
そんなフックで中盤まで引っ張っていく。
半分を越えてから、あのふたりがあらためて主人公として登場するという斬新な構成。
テレビ局の廊下を歩くエンドからのいちいちを説明してくれる。個人の印象ではこのあたりちょっと蛇足に思えてしまった。
「大理石の男」と完全に地続きの物語にしたのも地味にすごいポイント。「鉄の男」単体でみたひとちんぷんかんぷんなのではないかな。
検閲が緩んだ隙(戒厳令の前の一年半くらい)に企画・撮影・公開と、すごいウルトラCもこなしている。
第34回カンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いているけど、ポーランドで起こっている連帯による労働運動が世界的に注視されいた時代の話なので、ちょっと時事ネタ加点も加わっていそうだった。
実験的、革新的な内容であると同時に、反政府活動でこそ輝くワイダの才能も垣間見られて非常にオトクな前後編だと思った。
面白かった!
mh

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