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エスケープ・フロム・L.A.のnetfilmsのレビュー・感想・評価

エスケープ・フロム・L.A.(1996年製作の映画)
3.9
 時は1998年、反政府勢力の台頭でロスの治安が悪化、それに対抗してアメリカ国家警察が創設される。大統領候補は「罪の都市」ロサンゼルスに大地震が来ると予言。2000年、予言通りロスにマグニチュード9.6の大地震が起きる。その後、憲法が改正され予言者(クリフ・ロバートソン)は終身任期の大統領となる。彼は首都をヴァージニア州リンチバーグに移すものの、地震でロスは孤島となり、本土から隔絶する巨大な防壁で囲まれ、警察隊が監視する流刑植民地となった。2013年、父親の独裁政治に異議を唱える娘のユートピア(A・J・ランガー)は、政府が秘密裏に保持していたブラックボックスを盗み出し、ロスに逃げ込んだ。そこでで最大のテロ集団へと投降する。革命家クエボ・ジョーンズ(ジョージ・コラフェイス)は彼女と行動を共にしていた。彼の手からブラックボックスを取り戻すため、大統領はスネーク・プリスキン(カート・ラッセル)に白羽の矢を立てる。追放センターにやって来た史上最も悪名高き犯罪者で、元特殊部隊員のスネークはロス市内に単身潜入。彼の体には死亡率100%のウィルスが打たれ、神経組織破壊までのタイムリミットは8時間8分26秒。再びスネークの孤独な戦いが始まる。

 1981年の『ニューヨーク1997』の正当な続編である今作は、前作以上に情け容赦ないディストピアがスネークを待ち構えている。近未来の街はキリスト教右派に牛耳られ、モラルを外した行いをしたものは国外強制退去が待ち受けている。地獄のニューヨークから大統領を救い出した男はかつての名うてのヒーローで、15年間どのように生きて来たかはミステリアスだが、相変わらず彼の味方はどこにもおらず、女にも目もくれない。『ニューヨーク1997』〜『ゼイリブ』と連綿と続くカーペンターの近未来批判は、スネークを自由を求めた西部劇のスターのように神話化させる。マルホランド通りからサンセット大通りへ。次々と乗り移る車列は真っ先に『駅馬車』を彷彿とさせる。だが死のバスケとハングライダーのアクションだけが近未来の西部劇を印象付ける。大統領が付けたほとんど自虐的な名前の娘ユートピアも凄いが、前作ではぼやかされていた大統領側も所詮は反乱軍と同じ穴のムジナなんだとカーペンターはうそぶく。前作のアーネスト・ボーグナインばりの怪演を見せるエディ(スティーヴ・ブシェミ)や、ハーシュ・レ・パームス(パム・グリア)などの配役もことごとく素晴らしいが、何と言っても一番素晴らしいのは、数十年間津波を待った伝説のサーファーであるパイプライン(ピーター・フォンダ)との波乗りシーンだろう。女に「未来は今だ」と言い放った男は「自由」というアメリカン・スピリッツを高らかに宣言する。
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