くもすけ

マジック・ボーイのくもすけのレビュー・感想・評価

マジック・ボーイ(1982年製作の映画)
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グリフィンオニールが素晴らしい。手品は実際に彼の手の中で演じられ、水中で苦悶を湛え、脱獄をこなし、ポストの中にきれいに収まってしまう。これに匹敵するマジック映画はあるのか
スモールタウンで時代遅れのマジックショーがのんびり行われ、ダニーをひきとった叔父はマジックへの情熱を既に失っている。ダニー少年が父の轍を乗り越え叔父貴やダイナーの給仕娘に絡まれながら成長する話、にはならず、父親への複雑な感情を共有する市長のドラ息子とつるみ始める。金庫開けたとてそれで何するでなくこのぼんくら相手に憂さを晴らす、それだけの話。二人のとぼけたエンドに、少年の手付きに感動する以上の熱狂もなく、それがとてもよかった。
金庫開けの手順を丁寧にとり、エレベーターの天井に乗ったダニー少年を真上から撮る、撮影監督ケイレブデシャネルの監督デビュー作。

鬱顔のオニールはニッケルオデオンに次ぐ二作目の出演。父親からはひどい扱いを受けていたようだ。虐待、薬物、ネグレクト。今作のち3年後コッポラ(今作の製作)の長男をボート事故で死なせてしまう。コッポラ監督作への出演も立ち消え、その後飲酒、ドラッグ、交通事故、暴行など度重なる刑事事件をおこし映画界から消えていく