Jeffrey

マジック・ボーイのJeffreyのレビュー・感想・評価

マジック・ボーイ(1982年製作の映画)
3.0
「マジック・ボーイ」

冒頭、脱出術の名人ハリー・マスターズの息子ダニーは16歳。留置場での脱走計画、金庫破り、錠抜け手品、郵便ポスト、市長のドラ息子。今、エスケープ・アーティストとして少年がマジックを披露する…本作はデイヴィッド・ワグナーの原作をカメラマンから転向しこれが演出第1作となるキャレブ・デシャネルが監督を務め、 製作指揮はフランシス・フォード・コッポラが担当した1982年の映画で、当時少年だったグリフィン・オニールが主演を務めている。スリリングなストーリー展開、軽妙なコメディータッチで観客を映画世界へと引っ張っていく演出が有名で、長らく廃盤だったので見ることができなかったが、やっと見れた。正直期待していたほど面白いわけではなかった。ただ、そばかすの天才子役オニールは凄く魅力的だった。

まず、彼の不器用な手先の錠前破りのマジックは見ものだろう。ところがこの作品は、水中錠抜けをグリフィンの体当たり演技が素晴らしかったが、実際は彼は水槽から引き上がれたら失神状態でスタッフが青ざめたと言う小話がある。そうするとものすごい怖くもなるが、結果としては緊迫感ある演出が見事にハイライトシーンの1つとして存在する。残念なのはこの作品で彼自身はヒットしたのに、この先の作品にはほとんど当たりがなくて、そのまま大きな作品には出ていないと言うことだ。今現在役者をやっているのかすらわからない。昔見たホラー映画の「エイプリルフール」と言う作品が最後だった自分がグリフィン・オニールを見たのは…。



さて、物語は天才マジシャンと言われた今は亡き父の息子として、この世に生を受けた少年ダニー。彼もまたマジックにかけては一方ならぬ才能を持っていた。次々に見せる華麗なマジック。彼には開けられない鍵は無い。父に憧れ、父を超えることを夢に見て、ときには危険なマジックにも挑戦する。やがて、そんな彼は才能がありすぎるが故に、市長のドラ息子ステュに目をかけられて面倒な仕事に取りかかる羽目になる。市長の陰謀を知ってしまったダニーは…。

本作の冒頭は、1人の少年がとある事務所へやってくる。彼は紺色のスーツを着て社会部のデスクに特ダネを持ってきたと受付女性に伝える。女性は電話をかけ彼は奥へと案内される。するとある男と彼は会話する。彼の名前はスチュー。市長のドラ息子で、彼はダニーのマジックの腕に惚れ込み、仕事依頼する。ダニーの父親はマジシャンであり、年少ながら今は亡き父の才能を受け継ぎ、大人を手玉に取るほどの腕前のマジックを披露できる16歳だ。どういう仕事の依頼かと言うと、スチューの財布を父である市長の執務室の金庫の中に入れる事と言う不思議な依頼であるが、彼は引き受ける。

続いて、ダニーは伯母夫婦のところに厄介になっているが、その夫婦も舞台のマジックショーで生計を立てている。この家には父の思い出の品がたくさんある。特に父の最も得意だった水中錠抜けの水槽はダニーにとって1番魅力的なものだ。ある夜、そっと水槽に水を満タンにし、重りに手錠をつけて頭から飛び込んだ。しかし、手錠の鍵が開かず、もうちょっとで死ぬところを伯父に見つけられて助けられたこともある。ある日、ダニーはスチューと市長の部屋へ行く。不器用なスチューはそこで市長の怒りを買い、こともあろうに留置場にぶち込まれてしまう。ダニーは新聞社に行き錠抜けマジックをやりたいので留置所に入れてほしいと申し出る。

時間以内にそこから出てみせると言うのだ。彼は警察官にほぼ裸にされ、手足に手錠をつけられてしまう。そして独房へと連れてこられ彼は警察官がその場からいなくなって2時間以内に脱出すると言う。やがてマスコミは監獄破りの小さな名人出現とニュースで騒ぎ立て、ダニーは大事件へと巻き込まれていく…と簡単に説明するとこんな感じで、グリフィン・オニールのナイーブな内面的演技が素晴らしい作品だが、物語はちょっと退屈である。ライアン・オニールが父親だが、彼は映画初出演にして初主演と言う結果を打ち出している。

どうやらこの作品の元ネタの人物でハリー・フーディーニと言う脱出奇術の方がいたらしく、彼は1900年にロンドン警視庁で警察官に手錠をかけさせ、手錠を外し留置場から見事に脱出し一躍有名になったらしい。多分それを父親(この作品の不在の父)はフーディーニを思わさせているのだろう。ツッコミどころも結構あるのだが、まず留置場から脱出したいので留置所を貸してくれと言うのを子供に言われ、いいよと簡単にやって見せてしまうのが、さすが映画的である。逆に夢を与えてくれていて良いのだが。てか、この脱出術って今も主流なのだろうかマジックの…あまりマジック番組を見ないのでよくわからない。

特に主人公の少年がやるクローズアップマジック(コインやカードを使ったもの)はやはり見ていて楽しいものだ。これもオニールは猛特訓にしたんだと思う。赤と黒の3枚ずつのカードを交互に混ぜているのが実は混ざっていないと言うオチと、1枚ずつ増やし4枚の赤と黒のカードを交互に混ぜるが、一方は黒が4枚となり、他方は赤と思いきやキング4枚に変化していると言う考案の奇術もなかなかである。この作品を機にマジシャンになりたいと思う人は滅多にいないと思うが、プライベートでマジックなどをやってみたいなと言う人にはオススメの映画かもしれない(笑)。
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