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面影のdoiのレビュー・感想・評価

面影(1948年製作の映画)
5.0
菅井一郎と浜田百合子の年の差夫婦間に入り込んだ弟子の龍崎一郎。自分を砂浜に置いて泳ぎ去る二つの若い肉体、砂に突き立てたステッキ。聞いたことのなかった妻の歌声を引き出す若い男に冷静ながらも少しの波風。妻の青春を奪っている気がすると打ち明ける菅井一郎、対して亡き妻の面影に重なる浜田百合子に気もそぞろなあまり「先生の補って余りある魅力でカバーできるんじゃないですか」誰が聞いても空虚なフォローで逃れるのが精一杯の龍崎一郎。何も知らない浜田百合子が夫不在のピクニックで姪の若山セツ子との縁談を持ち出した途端広がる黒雲、近くには旅館。これは嫌なパターン。ひとり無邪気に見えた浜田百合子も宿で海辺の一日を回想、枕を並べた若山セツ子に「私たち夫婦の生活をどう思う?」寝つけないまま深夜の海岸で出会った二人、高ぶりを抑えきれない龍崎一郎は最初は例え話から、徐々に核心に迫るが浜田百合子はあまりの気魄にほとんど悲鳴のように「私は(夫と)幸せです」を繰り返すしかない、もう一人の自分がいるかもしれないことを意識しながら。妻の異変に気付いて問い詰めると怖い、と逃げられてしまう菅井一郎の弟子に対するせめてもの譲歩は穏やかな対話、ただし最低限の面目を保つための態度でもある。龍崎一郎の前妻の面影を知って泣き崩れる浜田百合子の心持ちは如何に。
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