青の

漂流教室の青ののレビュー・感想・評価

漂流教室(1987年製作の映画)
3.0
【漫画実写化問題のパイオニア】

出だしから「マミーマミー」言いながら三田佳子の胸を背後からまさぐる子役に(脚本に)ドン引き笑


—原作は神漫画—
巨匠 楳図かずお先生の傑作『漂流教室(1972年〜1974年完結)』はホラーやSF好きであれば必読書とも言える、文化遺産レベルの神漫画だ。

—ザックリあらすじ—
子供達にとって「知り得る社会の全て」である小学校が、敷地ごと丸々未来へとへタイムスリップ。
しかし、そこは既に文明が崩壊した人類が存在しない世界。
アフターアースな世界であった…。

一見ジュブナイルで複数の個性がぶつかり合う冒険譚のようだが、内容は残酷で無慈悲で絶望の波状攻撃。
しかし、その絶望&絶望な世界の中でさえ小さな希望の種があったりする。
ジャンルとしてのSFホラーを超越した生命讃歌でもあるし、当時としては、かなり異質でありながら文字通り時代を先取りしていた作品だ。
で、今作はその初実写映画である。

★以下ややネタバレ





















—どうしてこうなった?—
80年代日本映画は、今と違ってだいぶ元気だった。
特に角川映画全盛期で『戦国自衛隊』『復活の日』『セーラー服と機関銃』『里見八犬伝』
あるいは『宇宙戦艦ヤマト』や『機動戦士ガンダム 』『南極物語』『座頭市』…。
名作もあれば、派手さだけで売り込んだ作品も。
それでも言えるのは、とにかく元気があって、やたらと金は突っ込んでいたイメージだ。

今作も「とりあえず作っちまおう!」感が凄い。
しかし、先述した作品のように「今見直すとアレだけど元気と勢いはあるよね」とはならなかった。


—ほぼ別物—
例えるなら『進撃の巨人』実写版で巨人が出てこないレベル。
「名前だけ」と言い切ってもいいかもしれない。
舞台がインターナショナルスクールてのが違和感だし、タイムスリップ起因も変。
ほぼスタジオ撮影でしょぼくて泣ける。
見ただけでチビりそうなモンスターの筈が、友情モードを付加させたり。
原作にある絶望と絶望の重ね塗りがマイルドになり、唐突にハッピーエンド。
白ランニング着てワーイってなんやねん。

監督:大林宣彦、音楽:久石譲、脚本は後に『AKIRA』を担当する橋本以蔵、大人の役者陣も実力派揃い。
どうしてこうなった??

まったく個人的な考えだが、おそらく原作にある1970年代独特な泥臭さや湿度、貧乏臭(当時みんな貧しかった的な)を作品の空気感から排除しようとしたのでは?と思った。
インターナショナルスクールにしたのも、80年代後半にありがちだった「洋風で小綺麗でオシャレな生活スタイル」が今や一般的だよ?と言う嘘を作り上げようとしたのではないだろうか。
そこに原作が醸し出す雰囲気とのネジレが起きたのではないかと思う。

つまり、子供達が血生臭くゲロまみれになりながら必死に生き抜く様を「僕たちそんな汚いことしないよー、あはははーうふふふー♪」な世界感にしようとして、スカスカなハリボテ映画になってしまったのだ。

ここまでサゲといてなんだが、原作とは別物としたオリジナル作品であるならば、そこまで悪くは無いとは思う。
時代や撮影事情とか色々フィルターをかける必要はあるが。
しかし「実は原作とは別物のオリジナルです」って記憶の改変はできないので、どうしてもそう言う目で見てしまうのは否めないと思う。



—願うなら—
今一度、実写化のチャンスがあっても良いと思う。
リメイクかリブートか知らんけど。
3部作構成か、あるいは1クールドラマ※とか。
ハリウッド版でもネットフリックス版でも。
製作委員会システムを排した邦画としてでもいい。
日本はアニメの方が今や分野になっているので、長編アニメでもいい。
かつてのようにジャブジャブ金を注ぎ込んで、傑作漫画に相応しい映像化を願う。

…あー、でもなあ、やっぱしないで欲しいかなあ。
でも見たいよなあ…。
なんて気持ちがあったりするのも、愛すべき作品故なのかな。

※(2002年フジテレビ系ドラマ。2009年舞台版がある。さらには1995年ハリウッド版『DRIFTING SCHOOL』のOVAがあるらしい)


VHS、レーザーディスクは廃盤。
以降ソフト化はされていないので、もちろんDVDも無い。
各社サブスクでも調べた限り見当たらない。

てことは残る視聴方法は一つ…。
青の

青の