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レディバード・レディバードのameoのレビュー・感想・評価

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酒場で歌っている30半ばの女性マギー(Crissy Rock)は、ある日パラグアイ出身の男性ホルヘ(Vladimir Vega)に出会い意気投合し、互いの身上を語りだす。マギーには父親の異なる4人の子どもがいるが、今は会えない状態で、その経緯を話すうちに泣き出してしまう。数日後に養育の適性を判決する裁判があるという。

マギーは子どもを深く愛しているが問題も多く抱えていて、ホルヘとの出会いでいくらか改善はしますが、福祉局の判断も全面的に否定はできない。終始暗い映画という訳ではないですが、鬱々とした雰囲気はこの制度の難しさだと思います。

マギーを中心に描かれており、ソーシャルワーカーの思いはほとんど語られませんが、全体的に決して一面的ではなく、制度や社会構造そのものの問題点を提示し、理解や議論を促す内容に感じられました。

イギリスの児童保護に関する制度の歴史は古く、1889年から最近まで様々な変遷を経ていて、この映画は1994年の作品ですから、1987年に起きたクリーブランド事件、専門家による誤診が原因で100人以上の子どもが性的虐待として不当に保護された事件、に着想を得てるのではないかと思います。

この事件を受けて1989年に児童法が改正されますが、子と親に対するバランスや、ソーシャルワーカーの専門性・連携の向上や負担軽減など課題は多く残されている様です。

1989年児童法:
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ukyouth/2-111-01.html

イギリスの児童保護の現状と課題:
http://www.ritsumei.ac.jp/ss/sansharonshu/assets/file/2009/45-1_03-05.pdf

イギリスにおける児童虐待の対応視察報告書:
http://www.crc-japan.net/contents/guidance/pdf_data/h19_england.pdf

Ken Loach 監督の作品はDVD化されているものを順に観ていて、社会に対する強い問題意識と切れ味を改めて感じました。子どもの自然な演技と Crissy Rock の熱演も見所。
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