えそじま

春のソナタのえそじまのレビュー・感想・評価

春のソナタ(1989年製作の映画)
4.6
色彩によってのみ可能となる効果の追求。巧みに統制されることで機会に応じて主導権を握り、全体よりもディティールや物の力によって忘れ難い印象を与える。外の自然空間における新緑や花の彩りに限らず、室内でも服や調度品、壁紙、絵画、棚に揃えられた本までが春を思わせる。しかもそれは絵葉書的な季節への愛着や遊びの精神に留まることなく、会話劇における哲学的要素と、他愛もない周回的な恋愛喜劇の調和をはかる為の手段のひとつとして機能している。そこにもうひとつの手段として、ベートーヴェンやシューマン、ジャン=ルイ・ヴァレロの音楽が使われているのだと思う(「ヴァイオリン・ソナタ第5番へ長調《春》」「夜明けの歌」「交響曲エチュード」「モンモラシー・ブルース」)。ジャンヌの整理魔としてのムーヴが首飾り発見の動機、最後花を運び去るその瞬間まで一貫されているのは最高だった。
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