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孤独なツバメたち 〜デカセギの子どもに生まれて〜のevinyのレビュー・感想・評価

3.7
静岡には多い時で30万人在住したという日系ブラジル人の若者を追ったドキュメンタリー。

日系ブラジル人という呼称で表現されてきるもののこの映画で出てくる若者たちは出稼ぎで来日した親の2世で日本で生まれ育っている。

彼らは日本に生まれながら日本は故郷ではなく、とはいえブラジルにも行ったことはないという根ざす国がないという特殊なバックボーンを持っている。

この映画でいうデカセギは経済成長期の日本で製造業の働き手として日本に来て、2008年リーマンショックで真っ先に派遣切りされて帰っていくという先進国の経済的な都合で動かされながら、自国に帰っても仕事がなく口をそろえてデカセギの方が良かったと発言に世界レベルの貧困社会の救いの無さを感じた。

ただその現状に対して若者たちが悲観的に打ちひしがれているかというと、信じられないほどポジティブに生きている。

ただポジティブなだけでなくその裏には経済的な事情で友人や恋人と分断され精神的に傷つきながら、もう前に進むしか無い!という覚悟をもって日夜仕事や勉強に励んでいる姿が心に訴えかけてくる。

みんなしっかりした考えを話すので年齢がわからなくなるが、冷静に考えるとみんな16歳〜19歳という事実に驚愕します。

日本で直ぐ近くでおこっていながら全く報道されないブラジル移民たちの現実を見れる貴重なドキュメンタリーでした。日本での生活を映した前半とブラジルに帰国した後の後半の考え方の移り変わりを上手く撮っており構成としても秀逸。もっと広く流通されてよい作品。
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