多湖

バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>の多湖のレビュー・感想・評価

4.0
(昨年末に鑑賞)
■ 前半:腰を下ろした椅子に縮こまって座り、息をひそめながら、ひっそり・そっと、見守るような鑑賞。
後半:気づいたらソファにゆったり・深く腰を下ろしていて、リラックスしながら、おだやかに・そっと、見守るような鑑賞。
そんな向き合い方でみていた映画だ。ファンが多い作品だと耳にしたが、なるほど、という納得感がある。これを好む人が一定いるのもわかる、私も好きだと思った。

■ 変わった? 登場人物たちが集っています。愉快でたのしい。おそらくその中で一番ふつう寄り? なのが主人公の旅人であるジャスミンだった気がする。
ただ、変わり者役(役?)のブレンダはジャスミンに対し、こいつは絶対になんかヤバい、追い出してやる! を抱き、町の保安官に不審者が来たと連絡をしてしまう。もちろんジャスミンに何らヤバい部分はない、保安官とジャスミンの会話でことは終わる。それに大きな不満を抱くブレンダ。
このブレンダは、24/365マジギレヒューマンである。休む間もなくキレ散らかしている。逆にすごい、なんかほんとうにすごかった。キレるのってかなり気力・体力を要すると思うけど、ブレンダは常にマジだ。こんなに全身全霊でキレている人間を私は見たことがない。この世に生きる阿修羅とさえ言える。正直、もうかなり甚大なレベルで、どっからどう見ても厄介な人物だった。

■ ただ、24/365阿修羅ヒューマンのブレンダだけど、ジャスミンのある吐露をきっかけとして、ジャスミンにおだやかに接するようになる。
…ここが、個人的にかなり印象的だった。いやあんなにキレていたのにそのぽつりとした吐露でそんな風になるわけが…、とも思えるのに、あぁでもなんかこういうことって実際にあるんだろうな…みたいな。腑に落ちる感じがあった。

■ すごく、人間的なストーリーだった。すごく、人間に対する愛情がなければ生まれない映画だと思った。
日常の中にこの映画がある、それだけでほんの少し、だけど絶対にぬくもりに恵まれる。そんな映画だと思いました。
(もう配信で観ることは叶わないだろうか…。いつかまた観たい映画です。)
多湖

多湖