Foufou

霊幻道士・完結編/最後の霊戦のFoufouのレビュー・感想・評価

2.0
なぜか子どもたちがキョンシーキョンシー言うので、アマプラで見つけて鑑賞。どうやらドラマ化されているのですね。これが学校で流行っているのだろうか。タコゲームのように。

テレビでよく放映されもして、空前のキョンシーブームが全国を席巻したのが80年代後半と記憶。たしかシリーズ後半になると、人気者になる女の子が出てくるのではなかったか。本作は1989年香港作。

尾籠絡みにお色気絡み、子どもたちが思わず目を覆うシーンもなくはありませんが、かわいいものです。往年の香港映画ならお約束みたいなもの。

かたや道教、かたや仏教の寺が敷地を接して、双方の師匠と和尚が犬猿の仲、寄ると触ると子どもの喧嘩のようにいがみ合う。道教の師匠が道士で、こちらがまじないをよくし、黄色いお札を額に貼ってキョンシーをコントロールする。仏教の和尚のほうは、もっぱら念仏を魔除けに使う。仏の御心のままに、なんて言って笑顔を絶やさないのも和尚のほう。いっぽうの道士は研究熱心で、学究的な印象。こういう対比が見えるというのは、なんといっても年の功。ちなみに中国本土や台湾に行くとすぐにわかるのだが、庶民の生活に根ざしているのは、仏教ではなく道教のほうである。

今更気がついたのは、キョンシーの正装?が、女真族のそれなんですね。頭が辮髪で、ラストエンペラーを彷彿とさせる。下の娘なんかはエラく気に入って、早速来年のハロウィンはこの衣装を着て街を跳ね回りたいんだとか。

キョンシーってそもそもなんなんだ? 北方からやってきた騎馬民族である女真族の伝承からくるものなのか。だとすると、漢民族であろう作り手からすると、二重に他者性を帯びるわけだ。その得体の知れないものを、中国(=漢民族)四千年の秘法たる道教ないしは仏教で封じる、というそもそもの構図なんだろうか。

辮髪のほか、纏足や宦官もたしか女真族固有の風俗だったはず。オープニングクレジットで《 Chinese Vampire Saga 》とあるのを見つけて、おや、キョンシーはバンパイアなのか、と。たしかに吸血鬼のように犬歯が伸びて人に噛みつき、噛みつかれた者は、「毒」が回ってキョンシー化するという設定。早期に消毒しないとダメだというので、仏教側はマムシ油を処方し、道教側はもち米の搾り汁や蓮の実を使う。

ここらでWikiのお世話になると、古くは『西遊記』に登場し(キョンシー=僵尸)、その名も白骨夫人。明代清代の物語に多く登場するとあり(『聊斎志異』にも記載ありとのこと)、それゆえの女真族の格好なのかも知れない。埋葬された人が不意に動き出して人を驚かす、という伝承が古くからあって、これが「僵尸」の由来。だから、キョンシーはバンパイアである以前にゾンビであるわけだ。死体であるにもかかわらず腐らず、人を喰らい、やがて神通力を得て、空を飛ぶという。

本作を観ながら、ジャッキー映画に夢中になっていた往時を思い出しました。サモハン・キンポーとか、ユン・ピョウとかね。主人公の一人が立派な体躯をしていて、アクロバティックなクンフーアクションを嬉々としてこなしていました。ちょっと食傷気味になるほどに、堪能できます。

軸はコメディ。そこにホラーあり、アクションありと、なかなかサービス精神旺盛な作品でありました。
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