ジュライ

大脱走のジュライのレビュー・感想・評価

大脱走(1963年製作の映画)
4.1
実話を基にしたストーリーで、冒頭でも「キャラとかには多少脚色はあるけど、脱走計画は実際のものを綿密に再現してるからね」との念押しあり。

あらすじからもっとシリアスで悲壮な雰囲気を想像してたけど、中盤までは意外なほど明るく、中年男性が揃ってキャッキャと脱走計画を企てる図が楽しそうでナイス。まるで学園祭の出し物の準備をする高校生のごとき朗らかさ。
ただし「彼はもう精神がもたない」と言われているような人もいて、そこから次第に、あの明るさがグロテスクな瞞着に過ぎなかったことが分かってきます。

それにしてもあの抜け道は閉所恐怖症の人にはきつかろうと思っていたら、まさかの掘ってる本人がまさにそれで、気の毒すぎてちょっと面白かったです。まあそりゃ怖いよね。私は別に閉所恐怖症ではないけど、それでもあそこを通るのは嫌だ。
ただ、盲目の人も閉所恐怖症持ちも、必ず誰かが面倒みてくれるのが感動的。米軍人の書いた本を読んでるとみんな異口同音に「戦友との絆は地球上の他のどんな絆よりも強い」と言ってるので、たぶん本当にそういうものなんでしょう。

ただ私がストーリー以上に観ていて気になったのは、現実に収容所から生還できたユダヤ人がこれを観たとしたら、相当やるせない気持ちになったのではないかということ(もちろんその責任はこの作品にはないし、この作品の瑕疵でもない)。
あてがわれた住居は狭いながらもわりと小綺麗。紅茶の葉は貴重だから何度も使い回しており、ゆえに味が薄すぎるとか、「ミルクなしの紅茶なんて野蛮だ」とボヤく余裕もある。祖国の独立記念日を大はしゃぎで祝ってても何も言われず、スポーツや園芸も自由で、脱走以外ならなんでも好きにしてろという、捕虜にしてはなかなかの厚遇。
どれをとっても、当時のユダヤ人には望むべくもないものばかりだったわけで。

まあヒトラーはともかく、ドイツもいまだに戦争映画じゃずーっと悪役にされてて気の毒だけども。枢軸国側の国民としては、どういうスタンスで観ればいいのか迷うことがあります。

「華麗なる飛行機野郎」なヘルツにはFF7のシドを想起しました。雰囲気も似てるし。
ジュライ

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