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無鉄砲大将のnetfilmsのレビュー・感想・評価

無鉄砲大将(1961年製作の映画)
3.6
 空手部の稽古場、ひと際テキパキとした動きで目立つ高校生の海津英次(和田浩治)は校外でもモテモテで、スケート場では彼と滑りたい女性たちの順番待ちが出来るほどだった。英次は空手部の友人である春男(糸賀靖雄)や雄作(木下雅弘)らと「白柄組」という名の自警団を結成する。いつものごとく夜の巡回に勤しむ英次たちはそこで中年男性の他殺体を見つけてしまう。この事件の黒幕である新界興業は彼らの動きを快よく思わず、子分のトメ(上野山功一)やゲン(野呂圭介)を使って嫌がらせをした。実はこの新界興業のボスの新界(富田仲次郎)という男は英次の母・秋江(山岡久乃)をバー「ベニ」の雇われママとすることで、母の一切の面倒を見る心底嫌な奴だった。虫の収まらない英次は秘かに思いを寄せる音楽喫茶ボンヌのウェイトレス雪代(芦川いづみ)に彼氏がいるのを目撃し意気消沈する。五郎(葉山良二)という男は実は新界興業の兄貴分だが、ヤクザの世界から足を洗い、雪代と身を固めようとしていた。そんな折、ボスの新界は雪代の美貌に目を付ける。

 腕っぷしの強い高校生とヤクザとの対立劇としては、ほぼ『ハイティーンやくざ』と同工異曲のような作品だが、『ハイティーンやくざ』がかつての親友をヤクザの世界から足抜けさせる物語だったとすれば、こちらは一本気な和田浩治が、雪代への淡い想いを糧に、痛快なアクションに転ずる物語と言えよう。今作ではそこに雪代の父で酔いどれ町医者の津山(菅井一郎)と、対立するヤクザの中では話のわかりそうな五郎が出て来て、物語を動かす推進力となる。英次の母・秋江は経済的援助ばかりか、悪役の新界とズブズブの男女の仲になっていて、英次を落胆させる。ここでも戦争の爪痕が、父の不在に乗じうっかり悪の侵入を許すのだ。そればかりか今作の新界はひたすらずる賢く、母親の悲劇と同じ目に雪代を遭わせようとする。ラスボスは悪代官にも権力者にも見えるが、あろうことか五郎の足抜けにも待ったをかける。この閉鎖的な空間では全員がもつれ合い、ドロドロとした関係性と暴発寸前のじりじりした距離感を続けながら、クライマックスに暴発する。ヤクザの事務所でのアクションは清順にしてはやや凡庸な出来にも見えるものの、ラストの和田浩治の視線は彼女と果たしてピタリと合ったのかわからぬまま、列車は無情にも田舎へと走り去る。佐川満男(当時はミツオ)の頼りない歌声も甘酸っぱい青春に拍車をかける。
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