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笛吹川のRyuのレビュー・感想・評価

笛吹川(1960年製作の映画)
3.6
戦国時代は武田領 甲斐国。笛吹川のほとりで暮らす貧しい百姓一族の生き様を、武田信玄誕生から武田家滅亡までの約60年余かけて描く。

武田家という領主に振り回される庶民たち。気に入らなければ殺され、家を焼かれる。若者は戦に行きたがり、戦場で死ぬ。それがただ繰り返されていく。そんな家族を見てきた主人公夫婦は百姓らしく畑仕事をして暮らしていくのですが、血気盛んな息子たちは主君に忠義を尽くし、戦っていく。自身の一族はその主君家に大変な目に遭わされてきたというのに、その子供たちは一族よりも主君を選んで死をも辞さないのはなんとも言えない気持ちになります。
第二次世界大戦などの近代戦争は庶民が被害者ってイメージが強いですが、それは侍の時代も然り。いつの時代も戦いの被害者ってのは庶民。これは諸行無常ですね。木下惠介監督らしい反戦映画の戦国版って感じでした。
そして何より今作の特徴は部分的に色をつけた映像でしょう。ある被写体だけに色をつけてるとか、そんなのではなくてホントにモノクロフィルムに色を焼き付けただけなので、被写体や画面は動いても色がついた部分は動かない。実験的に挑戦するのは悪いことではないんですが、正直これはいらなかったと思いました。何度かある画面全体に色のフィルターをかけるのはまだよかったんですが、部分なのはなんだか違和感がものすごかったです。背景だけでなく、人にも思いっきり色を被せてくるのもあんまり好きではなかったです。この演出がなかったらもう少し観やすい作品になっていたのかなぁと思いました。
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