ゆみモン

笛吹川のゆみモンのネタバレレビュー・内容・結末

笛吹川(1960年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

深沢七郎の同名小説を木下恵介が脚色し監督した時代劇。戦国時代を舞台にしているものの、武将や合戦が中心ではなく、市井の人々を取り上げた異色作となっている。
モノクロ映像に着色したパートカラーについては評価が分かれたそうだ。私も、技術的に苦労したほどの効果は得られなかったのでは?と思った。

甲斐国の笛吹橋のたもとに住む百姓の一家。子や孫たちは、親が止めるのも聞かず、お屋形様のお役に立ちたいと戦に行き、次々と武田家に命を奪われていく。

田村高廣、高峰秀子の演技は言わずもがな圧巻である。
当時30代半ばの高峰秀子は、この作品で18歳から85歳位までを演じている。まだまだ特殊メイクの化粧品も技術も進んでいなかったであろうが、卓越した床山さん?の老けメイクと、高峰秀子の演技力でリアルな老女になっている。

市井の人々からの視点で描かれているので、戦国ものと言っても地味である。しかし、だからこそ“戦で理不尽に悲しい想いをするのは、いつも一般の市民である”という反戦のメッセージが伝わってくる。

高峰秀子も自著の中で述べていたと思うが、本作を木下恵介のNo.1と評価する人は多いそうだ。

着色を外し、デジタルリマスター化して、スクリーンで再上映してもらいたい作品だ。