ハレンチ学園在学生

笛吹川のハレンチ学園在学生のレビュー・感想・評価

笛吹川(1960年製作の映画)
3.4
監督の木下惠介はこれまで積極的に見たことがなかったのだが、わりと実験的なことをやっているのに驚いた。本作ではフィルムのところどころに赤青黄緑などの色を焼きつけ、見たことのない画面を構成している(成功しているかどうかはともかく)。
深沢七郎の原作は、武田家三代の世に笛吹川に住む一族六代に渡る物語で、戦ばかりでひどい目に晒されているにもかかわらず、領民は「お屋形様のため」と命を投げ出しあっさり殺される。叙事的かつ即物的に描くことで人の世の無常を際立たせているわけだが、本作は後半、高峰秀子の母親が自ら戦に出向く息子たち(松本白鸚、中村吉右衛門兄弟の若かりし頃の姿が見られる)を止めようとする姿に重きをおいて描かれる。片足を引きずりながら息子たちを縋りつくように引き止める高峰秀子の姿は高齢のメイクを施していることもあり痛々しい。多くの観客を対象とする映画ではある程度の脚色はやむを得まいが、どうしても親の心子知らず的なある種の倫理を植えつけてしまうように見えた。