教授

笛吹川の教授のレビュー・感想・評価

笛吹川(1960年製作の映画)
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武田信玄の領地に住む農民たちと、信玄の統治に翻弄される人々の生活。
信玄と時を同じくして生まれてきた主人公、田村高廣演じる定平の親族たちを中心に。
いわゆる、死地に赴く親の言うことを聞かない若者たち、を描く。

この辺りの思想が、ああ木下恵介だなぁと思うところなのだが、とにかく変な映画に仕上がっている。

その権力に翻弄される市井の人々。
戦が起きるたびに浮かび上がるさまざまな「死」。
モノクロの画面に不気味に塗りたくられた色。
ある意味でアホくさくなるようやその画面になんとも言えない感覚が湧き上がるから不思議だ。

実はこの色彩だったり、テーマだったりは黒澤明の「影武者」に影響を与えている気がした。

日本映画全盛期。
今、思えば現代よりももっと過激に、攻めた映画にあふれていてつくづくその豊かさに圧倒される。
どことなく緩く、ヒューマニズムとやらの作家、なんてイメージで木下恵介を語るのは間違いだと気付く。
恐ろしく前衛的で。シュールで。
強いニヒリズムを感じる屈折した作家だなぁと思う。
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