スポック

笛吹川のスポックのレビュー・感想・評価

笛吹川(1960年製作の映画)
4.5
権力者たちの戦のために、何も持てないその日暮らしの貧農民の若者達は、権力の傘の下で微かに夢見れる立身出世欲と組織に属する喜びに目覚め、命も地位の保証の無い危険な足軽に自ら飛び込んでいく。
そしてこれからも虫ケラのような悲惨な未来しか望めなく何の力も持たない貧農の親とその貧しいが平穏な生活を見限っていく。
うらはらに戦国時代の貧農民の若者達にとっては、延々と荒地を耕すだけの日々が続く過酷な暮らしや、先の人生に苦悩だけしか見えない生き甲斐の無い貧農民の日常よりは、明日の命さえ知れないが僅かでも生き甲斐が感じられる足軽の不安定な地位を自ら選ぶ方が魅力的であったのかもしれない。
映画が制作された戦後の間もない貧しい高度成長期の日本の現状とを重ね合わせた脚本であろう。
いつの世でも今が不幸せであると思う不満な心が人生を狂わす。