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評決のときのCinemanのレビュー・感想・評価

評決のとき(1996年製作の映画)
4.0
『評決のとき』
ジョエル・シュマッカー監督
1996年公開 アメリカ
鑑賞日:2023年3月17日

ミシシッピーの田舎町で10歳の黒人の女の子が町の暴れん坊2人の白人に強姦され暴行され木に吊るされる事件が起こった。
翌朝少女の父親が2人を撃ち殺してしまい圧倒的に人種差別主義者の多い土地柄で裁判が始まります。
殺人者の黒人の弁護を引き受けたのは彼の友人の白人弁護士。
アメリカのベストセラー作家ジョン・グリシャムのデビュー作を映画化した法廷サスペンスです。

【Story】
ミシシッピー州クラントンの田舎道をマリファナを吸いながら酒を飲んで大騒ぎしながら車を運転していた2人の人種差別主義者で街の暴れん坊ビリーとウイラードが10歳の黒人少女を強姦し暴行をくわえて木に吊るすという事件が起こりました。

警察でこの事件のことを聞いたジェイク・タイラー・ブリガンス弁護士(マシュー・マコノヒー)がその夜事務所で仕事をしていると乱暴された少女の父親カール・リー・ヘイリー(サミュエル・ジャクソン)が訪ねてきた。
カールは以前兄を弁護したことのある白人弁護士ジェイクに「もし俺が面倒なことになった時に助けてくれるか?」と尋ねた。
弁護士は「あゝ勿論だよ。面倒なことって?」と答えるとカールは「あんたにも娘がいるから分かるだろう」と言い残して立ち去る。

翌朝裁判所に連行されてきたビリーとウイラードを待ち受けていたカールはアサルトライフル(連射できる軍用銃)で2人を射殺した。
護衛についていた保安官補のルーニー(クリス・クーパー)も流れ弾を膝に受け足を切断するほどの大怪我を負う。

ジェイクは殺人罪で逮捕されたカールの弁護引き受けた。
担当検事はルーファス・バックリー(ケビン・スペイシー)。
やり手で州知事の椅子を狙っているルーファスは新米弁護士を相手にして裁判は楽に勝てる上に名前を売るチャンスだと大喜びする。

黒人差別主義者が圧倒的にしめるミシシッピー州で黒人が白人の2人を射殺して護衛警官についていた保安官補のルーニー(クリス・クーパー)も流れ弾を膝に受け足を切断するほどの大怪我を負わせてしまったこの事件はジェイクにとってほとんど勝ち目のない裁判だった。

裁判の初日に法廷で苦戦をしいられているジェイクの机の上にとても有利な判例の書かれたメモを見知らぬ若い女性が置いていった。
その夜再びジェイクの前に現れたその女性エレン(サンドラ・ブロック)は自分が死刑全廃を貫く成績優秀な法学生であり父親は有名な弁護士で下調べや調査能力が優れている。私を今回の弁護の手伝いをさせてもらいたい、もちろん無報酬でいいとジェイクに申し入れるがジェイクは断る。
エレンは「あきらめないわよ」と言ってその場を去る。

ジェイクは恩師のルシアン(ドナルド・サザーランド)と離婚裁判で設けている友人の弁護士ハリー(オリヴァー・プラット)、一度断ったもののその後も次々とジェイクに有利な情報をもたらしてくれたエレンとチームを組んで裁判に挑んだ。

【Trivia & Topics】
*原作者ジョン・グリシャム。
ミシシッピー大学ロースクール卒業後小さな弁護士事務所を開業したグリシャムは、たまたま12歳の少女レイプ事件を傍聴した。それは犯人を銃殺したいと思うほど悲惨な事件だったのでもし少女の父親がレイプ犯を殺したらという設定で創作活動を開始した。3年かけて書き上げたデビュー作「評決のとき」は28社の出版社に断られ
出版が出来たのは1988年。初版は5,000部だった。

*ジェイクの負い目。
次から次へと降りかかる難題に正義という大義を背負ってたたかうジェイクにとってのなんと言っても大きなマイナスは前日にカールからこの事件をほのめかされていたことだ。ジェイクはカールの共犯者だと言われても仕方がない立場にいる。

*絡み合う利権と人種差別。
KKKはジェイクの家族や周囲の人間にまで危害を及ぼし、人権保護団体はもっと力のある弁護士をつけて世間に訴えるべきだと騒ぎ、陪審員は全員白人、何よりも難しいのはどんな理由であれ黒人が白人を殺害したという事実は重い。
さまざまな負の要素や人間関係、利権問題が複雑にからみあい、法とは何か正義とは何かという難しさがみごとに描かれている作品です。

【5 star rating】
☆☆☆☆
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