ーcoyolyー

反則王のーcoyolyーのレビュー・感想・評価

反則王(2000年製作の映画)
3.3
ああそうそうあの頃の韓国映画のイメージってこんな感じ、と懐かしさが募った。21世紀、ゼロ年代初頭の韓国映画。垢抜けず暴力の振るい方含め牧歌的なユルさ。曲がりなりにも平成に馴染んだ日本と違って未だ昭和の世界観だな、韓国はまだ昭和やってんな、と思っていたあの頃。これ2000年か。ギリ20世紀か。この頃アジア映画の覇権を握っていたのは90年代に猛烈な勢いで一世風靡した香港を始めとした中華圏だったように思うのだけど、どこでポジションが入れ替わったんだろう?ゼロ年代を通じて香港映画が急速に勢いを落としたのと同時に韓国映画が力をつけて浸透して行ってその王座を奪ったと曖昧模糊ながら認識しているんですが私どこか事実誤認してませんか?

多分、その道が交差したのが冬ソナブーム(韓国側)とレスリー・チャンの自殺(香港側)な気がして、時期近かったっけ?と調べたら両方2003年でした。冬ソナBS放送開始が4/3でレスリー・チャンの自殺が4/1。何となく私の認識合ってるぽくない?

でも冬ソナもまだまだ垢抜けなかったじゃん。見たことないけどメディアが流してきたイメージから推察するに。それが世界の大多数の目に触れることとなって昭和のアイドルのような存在感から現在のK-popアイドルのような存在感に急速に垢抜けていった要因って韓国が国策としてソフトパワーに力を入れて金も人も注ぎ込んだから?そのターニングポイントが2003年?誰だこの時期の大統領?こんなことやるの金大中な気がするけどな、と調べたらまさに金大中の大統領任期が1998年2月25日から2003年2月24日まででした!その後を引き継いだのが盧武鉉なので政策的には継続性がありますね。韓国映画界に於ける盧武鉉の存在とその人生の幕切れに対する思いの重さについては常々気になっていたのですが、この人恐らく相当韓国映画界に恩を売ってるな。その後の政権って映画界に対してはブラックリスト作っちゃうような関係性だから余計金大中-盧武鉉ラインに対しての思い入れが強くなったのか!と諸々答え合わせが捗りましたがそれは目の前にソンガンホ兄がいたからで、この人が後に盧武鉉モデルの人物を演じることに……!とまるで牧歌的ではなくなった韓国映画で牧歌的ではない人物を続々と演じることになる歴史も知っているからで、目の前の牧歌的な世界観は色々余計なことを考え始めてもなお余裕でお話を追える感じだったので、一人の俳優の歴史と韓国現代史とアジア映画史という映画の筋から大分遠く離れたコンテクストに深く分け入っても全然ストーリーについていけるこの頃の鷹揚で牧歌的な韓国映画の懐の深さに感じ入るものはありました。
ーcoyolyー

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