けー

ザ・ハリケーンのけーのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・ハリケーン(1999年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ボブ・ディランも歌をつくって裁判のやりなおしを求めたもののやがて忘れ去られていったBlack Lives Matterムーブメント。

ボクサーのルービン・カーターがやってもいない殺人事件で終身刑3回をくらい、その間、外ではBlack Lives Matter運動が巻き起こり、様々なセレブも運動に参加し、ボブ・ディランが歌までつくって世論に訴えかけたりと盛り上がったものの、ルービン・カーターの状況を何一つ変えることができないままに忘れ去られてしまった...というくだりが映画の中にあり、本当に変えることが難しい問題なのだなと衝撃をうけ、なんだか途方にくれてしまった。

警察に証拠もないのに逮捕・拘束され、そのまま裁判で有罪判決。
それを覆す機会もあたえられない。
こんなに恐ろしいことはない。
有力者が気にいるか気に入らないで運命が左右される。

今更蒸し返されたら非常に都合が悪いということで、裁判でルービン・カーターの有罪判決の無効性を証言できる人たちが既に殺されていたり、殺されたり。

なんだかもう恐ろしい。

“見ざる聞かざる言わざる”ってサバイバルのための万国共通の奥義なのかもしれないと思えてくる。

大学に進学するために文字の読み方を学ぼうとしていた黒人の若者が古本屋で売られていたルービンが自分の無罪を訴えた本を練習用にピックアップする. やがて少年はルービンに興味を持ち、感化され直接当人に会いに行く。

このまま黙っては見過ごせないと、少年は大学に進学するための勉強をサポートするために少年をカナダに呼び寄せてサポートしてくれている白人たちに相談し、ルービンを釈放するために裁判をおこせる材料をひっしで探すことにする。

するとやっぱり彼らも命を狙われてしまい、ルービン当人がもう諦めるようにと説得したにもかかわらず、彼らは諦めなかった。

ルービンもまた自分が有罪であるとは頑として認めず抵抗を続けたけれど、たまたまルービンの乗った車を運転していたというだけでとばっちりで逮捕された運転手の人もルービンがやったと証言すれば釈放するという脅しにはついに屈しなかったところがすごい。

まずこの二人の精神力の強さに感嘆する。
正気を失うことなく、よくまぁ本当に耐え抜けたものだと。

それにしてもまたしても冤罪事件。

「何も悪いことはしていないんだから、調べればすぐに間違いだとわかるよ」 なんて、時々ドラマとかのセリフであるけれど、捕まったらもう誰もまともに調べてくれない。
へたしたら、裁判もやってくれないっていんだから、捕まったらおわりだよという気分になってくる。

ここまで杜撰だと冤罪で逮捕されているのはおそらく黒人の人たちだけではないんじゃなかろうか。ささいな勘違いで通報されて逮捕される確率が肌の色で変わるということで人種差別問題でもあるのだけれども、冤罪、不当逮捕は人権問題でもある。


(追記: “ささいな勘違い”なんて可愛らしいものではなく本当にただ歩いているだけなのに白人の人に警察に通報されたり、黒人の子供たちが遊んでいるだけにも関わらず白人の人が通報するという場面が相当数起こっていることをこれを書いた当時の私はまだよくわかっていなかった。白人の若者なら簡単な注意ですむようなケースでも黒人の若者だと前科にされてしまい、それが3回たまるとスリーストライク法で重犯罪を犯したとして刑務所行きになってしまう。両方ともそうなるのではなく肌の色で明らかに扱いが変わるということだ)


根拠なく逮捕され、有罪とされることがまかり通るのなら、言いがかりをつけるだけで逮捕できるということで。

で、うっかり余計なことを言って目をつけられたらたまらないから口をつぐんでしまう。
なるべく見ないようにする。
目の前でボコ殴りにされるのを見せつけられたら誰だって怖い。
自分はああいう目にはあいたくないと思う。

こう書きながら、法律とかドラマでなんとなく知っているだけで全然詳しくないし、冤罪って人権問題にかかわると書いてあっているのかなぁと思って、この二つの単語放り込んでぐーぐった検索結果みたら余計に落ち込んだ。

なんだか全然生々しい....😓


ルービン・カーターを演じていたのが我らがデンゼル・ワシントン先生。

もうまたもやめちゃくちゃカッコイイ!

かっこよかったけれど、これまたどんな気持ちで演じていたのかなぁなんて。

監督とデンゼル先生のインタビューをちょっとみたら、「人々が助け合えば、いろんなことができるって言いたかった」って、デンゼル先生の温かみがたまらないー。

監督の方は事件は知っていたけれども、ルービンの本を読んだ少年と自分と同じカナダ人がルービン釈放にかかわっていたっていうことを全然知らなくて、それを知って映画化したくなったそうだ。

そしてデンゼル先生もこの映画に対してすごく大きなこだわりをもっていて、ルービン・カーター氏とあった時に「この映画はあなたについてのではなく、それ以上のこと物語る映画」って話したっていうところもデンゼル先生の覚悟すげぇみたいな。

デンゼル先生のインタビューみてよかった。
なんだか萎縮しまくっていた気持ちが膨らんだ。

やっぱりデンゼル先生はサイコーだい。

 

追記:
この映画をみてタイリースがジョン・シングルトン監督の「Baby Boy」に出ることを決めたとインスタで書いていてビックリ!

タイリースが「Baby Boy」への出演を決めたのはデンゼル先生の「ハリケーン」を見たことがきっかけだったと。
全然知らなかったんですが、タイリース、デンゼル先生に「ワイスピ」にでてもらいたいと再三発言していたりしたんですね。

もしもタイリースが「Baby Boy」にでていなければ、「ワイスピ 2」の出演もなかっただろうし、タイリースが出演していなければ「ワイスピ2」をジョン・シングルトン監督が手掛けることもなかったかもしれないと思うと、なんというかやっぱりデンゼル先生の影響力ってすごいなぁって。

いやすごくないはずがないんですが、タイリースの口からデンゼル先生の名前がでたっていうそれがなんだかめちゃくちゃ嬉しかったっていうそれだけなんですけどね。「どれだけこの業界で長くやってきていても、実際にあったことが夢みたいに思える存在がいる」なんて言われちゃうと、ニコニコがとまりませんよ。

なんだか、「ワイルド・スピード」からはじまった旅が一周巡ってもどってきたみたいな気分がいたしました。


あとついでに覚え書き

2020年の6月末にデンゼル先生がなんとなんとインスタライブに登場いたしまして。
"デンゼル先生"と"インスタライブ"この組み合わせがよもや実現しようとは!

ロックダウンのおかげで普段はSNSを敬遠しがちなスターのみなさんもSNSに登場するようになり、思いがけない組み合わせでのインスタライブも頻繁に行われたりして、これもロックダウンのおかげだと大喜びしていたのですが、近頃はあまりの量にキャッチアップがおいつかないというか。

インスタライブの設定を息子さんのマルコムさんがやってあげたようで、冒頭にでてきてたんですが、親子ぶりがめちゃくちゃ可愛かったです。

とにもかくにも元気そうで、嬉しい限りでした。

ロックダウン後、警察に連行されそうだった黒人の方を落ち着かせている先生の姿がパパラッチされ、その際にデンゼル先生がマスクで鼻を覆っていなかったことで、世界中のデンゼル先生ファンを心配のどん底に突き落とし、そして後日正しいマスクの装着姿でピザの箱を抱えていらっしゃる姿がパパラッチされ、よかった、ちゃんと正しくマスク装着しているね、と世界中のデンゼル先生ファンの胸をホッと撫で降ろさせ(笑)

デンゼル先生は人類の至宝ですから!
うっかりコロナに感染されたなんてニュースは絶対にききたくないので、これはとにかく一安心。

65歳ですがデンゼル先生の笑顔やキラキラぶりは相変わらずです。

BLMについてもロックダウンについても、デンゼル先生は前向きというか。

デンゼル先生の話をききながらその笑顔をみていると、大丈夫だって気分にさせてくれる感じがもうたまんねぇ!

万全の安心感!

デンゼル先生が笑ってる限り大丈夫っていう気になる!!!

デンゼル先生、「マルコムX」の撮影中にお父様を看取られたそうで。

延命治療のスイッチを自分の手でオフにされたというのは、たまらない瞬間だっただろうなぁと。

「マルコムX」の撮影中は殺害予告もきたりしてはじめてボディガードがついたとか(そういえば「遠い夜明け」でスティーブ・ビコを演じた時も殺害するという脅しがきたとおっしゃっていたような...)。

BLMに関しても自分たちの若いころと違って若者が考えを自由に発信できるプラットホームがいろいろあって、選択肢が増えたのはいいことと。
けー

けー