みんと

黄色い星の子供たちのみんとのレビュー・感想・評価

黄色い星の子供たち(2010年製作の映画)
4.2
最近の報道の中でふと耳にした“決してウクライナ人をユダヤ人化させてはならない!“… 表現が正しいかは別として、強烈な負のパワーワードいやキラーワードとして個人的に突き刺さったまま抜けずにいる。

今だからこそ観て、考えなければいけない戦争のこと。心が折れること覚悟で鑑賞。

第二次世界大戦中、ドイツ占領下にあったフランス政府がユダヤ人を一斉検挙した“ヴェル・ディヴ事件“の映画化。
元ジャーナリストのローズ・ボッシュ監督が入念な取材を重ね自ら脚本を執筆。家族と一緒に検挙された子供達を中心にユダヤ人たちが辿った過酷な運命を描いてゆく。

『ホロコーストの罪人』ではノルウェーを舞台に、今作ではフランスを舞台に同じような事が行われていた事実に怒りよりも虚しさすら感じる。

このタイプの作品でのナチスの残虐性は、おそらく想像と大きくかけ離れていないのだと思う。けれど、やはり映像として実際に視覚で捉えるのとでは訳が違う。

過去の歴史の中での痛みすら忘れ、とんでもない思想に取り憑かれ、方向性を見誤ったならば、暴走し盲目的に手段を選ばなくなる危険性は時代とは関係ないのだ。

ホロコースト作品の中でも、子供達にスポットを当てられている意味では『縞模様のパジャマの少年』が真っ先に浮かぶ。そして居た堪れなさが蘇り胸が苦しくなる。

ただ今作では僅かとは言え希望を見いだせたのは救い。ヴェル・ディヴの収容所に押し込められたユダヤ人達の元に赤十字から派遣された看護師アネット(メラニー・ロラン)の視点が描かれている。そして献身的に医療にあたるユダヤ人医師(ジャン・レノ)の姿にもグッとくる。

とりわけメラニーの静かな物腰の中に絶えず見て取れる熱いものに涙が溢れた。
そして、勿論 手放して“あ~良かった“と言えるものでは無いにしろ、ラストシーンに大きく心を揺さぶられた。

自身は華やかな日常を過ごし“私の言葉はすなわち私なのだ!“と言うヒトラーの台詞。暗闇と静寂の森での恐怖を“危険なのは死者(幽霊?)より生きた連中だ“と放ったジョー少年の台詞。
このコントラストに戦争の無意味さを切々と感じる作品だった。
そして、同じ過ちをなぜ人間は繰り返すのか、改めて考えさせられる作品だった。
みんと

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