そうねだいたいね

イエスマン “YES”は人生のパスワードのそうねだいたいねのレビュー・感想・評価

4.7
もし自分が友人らの前で元妻に今彼を紹介され、テンパってバーの店員とぶつかり飲み物ぶちまけた挙句、滑ってブッこけるというこれ以上無い辱めを受けたら即刻自害する。しかもその後、元妻に「声が聞きたかった」と電話するなんて正気か?気は確かか??

本来なら主人公に挫折を味合わせ、そこから何かしらの希望を見出し再び立ち上がらせるというキャメロン・クロウ映画の展開になりそうな物語なんだが、この映画は違う。全く違う。主人公が「イエス」の力に味を占めてからが本番なんだが、ただだだ幸せ続きで何一つ不幸なことが起きない。いちいち面白いコメディアンのハッピーな人生を見せつけられ続ける。ただ、不思議なことにこれが苦じゃ無いんだ。むしろこちらまで幸せな気持ちになるというか。登場人物の幸せな部分だけ見せることで、「恐れず挑戦することは、何かしらの出会いやチャンスを得る」そして「自分の意思を大切に」という至極真っ当に思えて、いつの間にか見ないもしくは見れずにいた現実的なことを教えてくれる。主人公が挫折することで見えなかったものに気付く姿を描く成長ドラマではなく、敢えて幸せの絶頂を体験し続ける主人公を描くことで、映画そのものがテーマであるかのような見せ方。それはある種大胆な構成で、テーマを前面に押し出し過ぎて観客を引かせてしまう可能性が高いように思えるが、見事な脚本でハッピーな気持ちのままハッピーなことに気付かされる。ラース・フォン・トリアーもビックリなハッピー炸裂ムービー。これはジム・キャリーの力なのか。どんなシリアスな芝居よりコメディを演じる方が難しいとは聞くが、彼にとっちゃお茶の子さいさいなんだろう。本当に見事だった。映画は人の人生を見るから面白い。