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セントラル・ステーションのBaadのレビュー・感想・評価

セントラル・ステーション(1998年製作の映画)
3.0
ブラジル映画は割と見る方だと思うのですが、これは唯一家族で劇場で見てブーイングがおこった映画でした。

その原因は一にも二にも主人公の女性があまりにもエゴイスティックで見ていて不快感を禁じ得ない、ということだったのですが、その不快感の原因の一端は今思えばブラジル映画らしからぬ撮影の平板さにあったように思います。

他の映画でも、ちょっと理解するのが難しいような独特な風俗や事件が映し出されることはよくあるのですが、多くの場合、それらは、同時にかなり意表をついた撮影法を伴っているので、ストレートにこちらの心に突き刺さるということはなく、面白く見られることが多かったのでした。

でも、この映画の場合、意表をついた撮影方法も、他の西欧の映画で見たことがあるようなものであることが多い。冒頭の駅の部分など、レスターの『オールデイズナイト』を思わせます。

かといって、写実的な映画として完成度が高いかというとそれもそうではないような気がします。ラスト近くの長いアップの場面など、ちょっと首を傾げるような中途半端な感じがして興ざめでした。

だからといって、はっきりそれと分かるほど下手ではないし、社会的テーマなので、別の要素のせいで不快なのかもしれないと思ったりもするのですが、やはり撮影や演出の洗練度が高くないのだと思います。この映画の場合、それはよく作用していますが、あまりなじみのない国の映画だからそれでもいいと思われてしまっていて、その結果この監督の評価が高いのだとしたら、他のブラジルの映画作家に失礼なのでは、とちょっと思ったりもします。

中進国の社会派映画作家すべてにキアロスタミやマフマルバフの洗練を求めるのは無理があるのでしょうが、カメラマンの技術レベルが低予算映画でもかなり高く、バベンコやグラベル・ローシャのような鬼才・天才を生み出した、芸術分野ではレベルの高い国の映画としてはすこし残念な作品です。
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