月うさぎ

テルマエ・ロマエの月うさぎのレビュー・感想・評価

テルマエ・ロマエ(2012年製作の映画)
4.2
私もずっと謎だったんです。なぜ、現代のイタリアでは風呂がないがしろにされているのか?古代ローマは公衆浴場文化の先駆けだったのに。

「世界で一番風呂を愛する国民、それは日本人――と古代ローマ人だ」
これはまさに「風呂愛」で繋がる時空を超えたお風呂ファンに捧げる映画なのです。

まず最初に、私は原作のファンです。映画化の話も作者ヤマザキ・マリさんのブログで知りました。彼女が一番喜んでいたのは、主役が阿部寛さんに決まったということでした。
マンガの実写化には、まず、ほぼ100%の確率で「原作と違う」と言われるはず。
それでも、これだけは言い切れます。
阿部寛以外の人がやるべきだった。という人は皆無でしょう!
誰もが、ああ、彼ならいいわ。と安堵したはずです。もちろん私も!
もし主役が彼でなかったらこれほどのヒットにはならなかったのではないでしょうか。

原作の連載初期は1話ごとに完結する、大きな枠組みを持たない話でした。連載の予定もなかったそうです。シンプルにギャグマンガだったわけです。
それがローマ史を背景持ってきて史実を織り交ぜた壮大なお話しに変化していく。この微妙な変化が映画にも反映されていて、前半と後半では雰囲気が違うと思った方が多いみたいですね。でも。それって原作もそうなんですから、ある意味で忠実だと思います。

映画の笑えるネタはほぼ原作の通りでコミックの質の高さが証明された形。
阿部寛がしかめ面の渋い顔と驚きのオーバーな表情のギャップを完璧に演じながら、最後の笑顔の素敵な事と言ったら!
全編ドタバタにすれば?なんていう意見の方もいましたが、とんでもないことです。
それだったら阿部寛、出てくれませんよ!絶対に!それは困る!(笑)

原作にないアレンジもストーリーをまとめる上では常識的な改変だと思います。
つまり現代サイドで軸になる人物を作ったこと。(これが上戸彩です)

脈絡もなく古代ローマと多分昭和時代の日本を行き来するという都合の良さが、ある人物に関連付けることで説明がつきやすくなりました。
ワープから元の時代へ戻るワザも映画オリジナルのアイディア。ヤマザキマさんは「こんな風に変えたいんですけど」と言ったときに、すぐ「うん、いいわよ」と言ってくれたそうです。
上戸彩が漫画家を目指している温泉宿の娘って設定もラストに生きてきます。
それもなかなかいいアイディアでしょう。

イタリアロケをやったというのも見所のひとつです。
世界最大級の映画撮影所「チネチッタ」を使い、ドラマ『ROME』で使用した大迫力のローマのセットを借りての本格的映像が圧巻。
けれどお風呂のセットはイタリアではなくて、川崎の体育館なんだそうな。

【おまけ】
映画内でオペラを歌っているのは、三大テノールのプラシド・ドミンゴなんですよ。
声だけですけど、監督の強いこだわりでご出演いただきました。
ドミンゴは映画になかなか許諾を出さないらしく、世界で2例目なんですって。
よくこんな映画で許可してくれましたよね(笑)。
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フジテレビジョン プロデューサー稲葉直人・談
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