Yuzo

ハイウェイのYuzoのレビュー・感想・評価

ハイウェイ(1964年製作の映画)
5.0
初見。アマプラに感謝。しかし暗いとは聞いていたが、ここまでとは。救いのなさが邦画のよう。ムショ帰りの主人公が社会復帰できない話と思いきや、更に主人公の深層心理にまで踏み込んでいく。養母の屋敷や音楽に「サイコ」風な演出があるが、あまりサイコパスものに寄せずに、不遇な幼少期を過ごした主人公が挫折してしまう人間ドラマとして観たい。

ロバート・マリガン監督は2本連続でマックイーン出演作を撮っているが、最初の「マンハッタン物語」も都会派ラブストーリーどころかストリート感のある青春残酷物語だったし、本作もトラウマを持つ社会不適合者の話だし、どちらも白黒だし、なんか大島渚の映画みたい。昔観た「アラバマ物語」はハリウッド的倫理主義映画のイメージだったが、マックイーン出演作を観ると実はもっとリベラルな監督なのかもという気がしてくる。妻や娘や主人公の周りの人達の演出も不自然なところがなく安心して観ていられる。健気なリー・レミックは倍賞千恵子的。製作のアラン・J・パクラも好きな名前だ。

また、本作は白黒で映像のコントラストが強く、マックイーンの顔の印影がよく映える。マックイーンは顔の彫りが深く、眉毛から奥まったところに眼があるので、上から顔に光を当てると眉毛から下の眼の周りが影になって真っ黒になり、深く思慮しているような趣きの画になる。逆に瞳がブルーで眼が大きく顔が小さいので、顔に光が当たってカッと眼を見開くともう顔全部が眼みたいになる。マックイーンはニューシネマの人ではないので、自然な表情というよりは顔を造るところがあるが、本作でも様々な顔の画を見せてくれるし、大ファンとしてはどの顔もカッコよくて全部静止画にして写メを撮りたくなる笑。

それにしてもマックイーンの鬼気迫る演技が凄い。マックイーンは実生活でも青年期は素行が悪かったらしいし、スターになっても柄の悪さが滲み出ているところがある。本作でも「いつかコイツやらかすだろうなぁ」感の漂わせ方がハンパないし、ナイフの抜きっぷりも上手いを通り越してるし、映画のケンカのシーンで目潰しで相手に砂を掛けるのを初めて観たけど、ホントにやったことあるでしょ、アナタって感じ。アクションにリアリティを込めるマックイーンイズムをここでも感じとることが出来る。

マックイーンは何かに取り憑かれたように物事に執着する役柄を多く演じているが、本作でもトラウマに囚われる主人公を強烈に演じている。また数多くのマックイーン出演作に登場する「逃げる」シークエンスがここでも出てくるが、あまりにも衝動的でびっくりする最初の行動や、車を追うマックイーンを車側から撮る画など、これまた強烈なインパクトを残す。

マックイーンのフィルモグラフィー的に言えば本作はキャリア中期の無名のドラマ作品だが、「突撃隊」「戦う翼」「シンシナティ・キッド」「ハイウェイ」「ネバダ・スミス」といった中期の作品群で、マックイーンは寡黙で周りに順応せず、物事に異様に執着して行動するギラギラした男というキャラを確立している。本作もそのキャラを大いに発揮した隠れた重要作と言えよう。
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