半兵衛

唐獅子警察の半兵衛のレビュー・感想・評価

唐獅子警察(1974年製作の映画)
4.0
実録風味にしてはちょっとドラマが強すぎるけれど、野上龍雄の脚本が素晴らしく二人の兄弟の相克とその結末が重厚に描かれており映画を見終わったあと長編小説を読了したような気分に。ラスト、地元に戻って殺し合いを繰り広げる兄弟は中上健次のテイストも。

実録路線らしいバイオレンスやエロを入れつつもドラマをしっかりと受け止めてきちんと映像化する中島貞夫の仕事振りも見事(よくよく考えたら中島&野上コンビは『現代やくざ 血桜三兄弟』『鉄砲玉の美学』と傑作を連打しており相性が良いのだろう)、久々に再会した兄の小林旭と弟の渡瀬恒彦が故郷のことで懐かしんだあと、ちょっとした行き違いからお互いに憎悪が募りぶつかり合う場面は監督と脚本の個性が絡み合い文芸映画のような名場面に。

重厚なやくざ幹部を演じる小林旭、狂犬演技を存分に発揮する渡瀬恒彦それぞれの好演も光る。

渡瀬が自分と組んだ関西のやくざ・安藤昇の裏切りを知り射殺する場面の、「もうやるしかない」という顔をしながら銃を撃つのがひたすらバイオレンスな深作監督とは違う悲痛な暴力が印象的。

でもラストの小林旭の死に様はちょっとやり過ぎ。
半兵衛

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