Renkon

唐獅子警察のRenkonのレビュー・感想・評価

唐獅子警察(1974年製作の映画)
4.0
ヤクザ映画というより、ギリシャ悲劇みたいなお話だった。

近所の大人たちに蔑まれ、嘲笑われてきた過去を持つ、腹違いの兄弟直人(小林旭)と拓(渡瀬恒彦)。
やがて直人(以降片岡)は上京。ヤクザ社会に足を踏み入れ、幹部の地位にまで昇りつめていた。
一方の拓は、最後まで親の(片岡の母親も)看病をし、その後は他人の女房を寝とったりして地元舞鶴で燻っていた。
そんな真逆の人生を歩んだ片岡と拓が、10数年ぶりに再会を果たす。
拓を歓迎し「これで当面遊んでくれや」と羽振りの良さを見せる片岡。
だが、これまでのフラストレーションを爆発させた拓は、自らも組を立ち上げ、片岡に対抗することを決意する。

至極無鉄砲に見える拓だが、その裏には想像を絶する苦労があったのだと思う。
そんな拓に対して、
「俺にお袋はいねえ!いいか?ヤクザの俺にとっちゃ親分が親父、姐さんがお袋なんや!」
とめちゃくちゃな理論を振りかざす片岡。これには狂犬も黙っちゃおれまへん。
町のチンピラを率いた拓は、松居組の看板を掲げ、新宿の街で大暴れ!
やがて片岡と対抗する栗原(安藤昇)の介入を許した拓は、片岡に対して宣戦布告をするのであった。

片岡に対しての憎しみだけでヤクザになった拓には、ヤクザの仁義など通用しません。
縄張り?手打ち?
そんなん知ったことあるかい!
こうして片岡と拓の兄弟喧嘩は仁義を逸脱し、ギリシャ悲劇のような血のスパイラルへと墜ちていくのです。(なんだかすげぇぜ、東映!)

そんな重苦しそうなテーマではありますが、描かれ方は中々コミカル。
軽快なブギに乗って襲撃するシーンでは、拓と舎弟(川谷拓三)のダブル拓ボンが見れたりと東映ファンの心を刺激します。
1番の見所は、ハジキの運び屋室田日出男に対する拷問シーン。
車から引っ張ったバッテリーを彼のハジキに挟めば、一溜まりもなく在り処を白状してしまいます。
(そういえば、沖縄ヤクザ戦争でも室田の去勢シーンがありましたが、中島貞夫は彼のチ◯ポを何だと思ってるんでしょうか!)

この映画には恋愛要素も盛り込まれていました。
かつて「坂下のブス」というあだ名をつけられていた幼馴染も、今じゃ拓の立派な女房。
そんな女房に最後の別れを告げるシーンがこちら。

「お前はええ女や。もう坂下のブスなんかと違うぞ!」
そして、熱い口づけ!

これぞ、BIG LOVE!
これぞヤクザ映画史に残る、名ラブシーンなのではないだろうか。

架せられた運命に立ち向かっていってもなお叶わない努力、不条理、を悲劇というそうです。
蔑まれた悔しき過去を断ち切り、死に物狂いで「運命」から逃れようとする片岡の、唐獅子の様な形相が深く胸に残りました。

@ラピュタ阿佐ヶ谷
渡瀬恒彦狂犬Nights
Renkon

Renkon