イチロヲ

沓掛時次郎 遊侠一匹のイチロヲのレビュー・感想・評価

沓掛時次郎 遊侠一匹(1966年製作の映画)
3.5
仁義の道をひた走る渡世人(中村錦之助)が、相棒(渥美清)の死を発端にして、不毛な復讐行為へと足を踏み入れてしまう。アンニュイな渡世人による「ヤクザ稼業からの脱出不能状態」を描いている、任侠時代劇。

渥美清が主人公の舎弟役を好演。丁々発止の口上を披露してくれるが、シナリオの都合上、冒頭部にて退場してしまう。その後は、世間ズレした主人公の葛藤劇、または人生の修復劇が展開される。

「敵対相手にも生活があること」を自覚しながら、信念のもとに抜刀するところが醍醐味。斬って、斬られての世界から脱出したくても、自身の血により引き戻されてしまう、負のスパイラルがエモーショナルに繰り広げられていく。

主人公と接することになる子持ちのお母さんが、「良い人だけど、関わったらヤバイことになるかも」と、瞬間的に察するような場面が出色。全編が居たたまれない雰囲気に包まれており、後に引きずる系映画の王道といえる。
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