佐藤克巳

こころの佐藤克巳のレビュー・感想・評価

こころ(1955年製作の映画)
5.0
「ビルマの竪琴」製作遅れの合間に短期間で出来上がったとは思えない程完成度の高い巨匠市川崑初期の最高傑作。最も広く読み継がれた夏目漱石原作を忠実に再現。下宿先娘新珠三千代の余りの美しさに、道を極める困難に苦しむ親友三橋達也を、先生森雅之は病気を装い出し抜き、先を見通していた母親田村秋子に結婚を了解させ、三橋を自殺に追いやり周囲に友人想いを擬装するが、その贖罪意識に苛まれ自殺を決意する難解な役どころを森は立派に演じた。先生を尊敬し遺書を受理する受け役安井昌二も好演、新珠の眩いばかりの美貌もさることながら、田村の神技的演技力に驚嘆。明治天皇崩御、乃木希典殉死、大正改元、時代の変わり目の不安定さは、昭和終焉と酷似。その後、良くなったでしょうか?
佐藤克巳

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