しゅん

ゲド戦記のしゅんのネタバレレビュー・内容・結末

ゲド戦記(2006年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

 人は、「耐えられない」と思うほど苦しいことや悲しいことがあった時、もしくは何気ない日常の中でうまくいかないことが続いたりした時に、「自分はなぜ生きているのか」と考えてしまうことがあると思います。
 
 アレンは、

「終わりが来るとわかっているのに、それでも生きていかなければならないのかな…」

と苦悩し、いっときは永遠の命を欲し大切な存在のハイタカに剣を向けます。彼の中で膨らんだ不安、恐怖の心は大きすぎる闇となり、心の「光」を体から追い出してしまいます。闇にとらわれ、どこへ行ってもどこへも行けず、1人怯え、もがき苦しみます。

 だけど、
ハイタカの言葉、
 
「わしらが持っているものは、いずれ失わなければいけないものばかりだ」

辛い過去を背負いなお懸命に生き続けようとするテルーの言葉、

「死ぬことがわかっているから命は大切なんだ」
「死んでもいいとか、永遠に死にたくないとか、そんなのどっちでも同じだわ。一つしかない命を生きるのが怖いだけよ」

彼らの言葉、愛を受けアレンは、生きること、死ぬこと、命の意味に気づきます。そして彼の中の光は取り戻され、彼は前を向く。

ハイタカはこうもいいます。「不死は生を失うことだ。」これは一見矛盾した言葉に聞こえます。不死は死を失うことじゃないのか、と。
 そもそも生とは何か。実は生は、死の存在に支えられています。死が存在するから生が存在し、命は循環します。もし死がなければ生など存在しない。だから不死は生を失うことになる。

 私たちは必ずいつか死ぬ。だから今こうして生きている。どちらかだけはありえない。それは「光」と「闇」にも言えることです。最もはっきりと光を感じられるのは真っ暗闇の中だけです。

悲しみは必ず生まれます。そして悲しみが存在し続ける限り、必ず喜びが共にあり続けます。私たちに最も大切なことを、アレンが、テルーが、スタジオジブリが教えてくれました。
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