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ワイルド・ブリットのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ワイルド・ブリット(1990年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ベン、フランク、ポールは幼なじみで、青年になってからも街のチンピラとして喧嘩に明け暮れていた。この街で腐っていくより、何とか成功したい野望を持つ3人だったが、敵対するチンピラのリーダーをベンが殺してしまう。密輸で大金が稼げるという噂のベトナムに逃げたが、戦争の残酷な生き地獄が待っていた…。

香港の暗黒街で育った三人の若者がベトナムに渡り、戦時下の混乱を生き残ろうとする姿を描いたアクション。
青春を描いた前半部、戦場での凄惨なシーン、帰郷した後に迎える悲しい結末。
比べるまでもなく、これはジョン・ウー監督版の「ディア・ハンター」だ。

ベトナム到着後、すぐにトラブルに巻き込まれ、3人は運んでいた密輸品も失い、命からがらサイゴンの裏社会を牛耳るボスの所へたどり着く。
彼らはボスから大量の金を奪い、ベトナムの戦地の中を逃げる事になるが、ベトナム兵に捕まり、拷問の責め苦と理不尽な殺人ゲームを強要される。

現実を直視し「命よりも金が大事だ。」と仲間を裏切り、銃を向けるレイ・チーホン。
「何の恨みもない人間を殺せない。」と、ベトコンの理不尽なゲームに抗うジャッキー・チュン。
3人の中で最も優しくお人好しだった男が、仲間の銃弾を頭に受けて文字通り狂ってしまう残酷さ。
そして徐々に悲しみを瞳に帯びていく若きトニー・レオンは運命の残酷さにただただ翻弄される。
前半で照れ臭くなるほどの友情が、戦争によって壊れてゆく。
廃人と化したジャッキー・チュンに泣きながら銃を向けるトニー・レオンが悲しい。友の遺骨とともに香港に帰郷した彼は、かつての友に復讐を誓う。

本作は他のジョン・ウー作品に見られるヒロイックな爽快さから程遠い。
陰惨な話で、主人公が友の遺骨を持って繰り広げるラスト30分のカーチェイスとガンファイトは、カタルシスというよりは友情の破綻、青春の輝きの終結が描かれ、とても悲壮感溢れたものになっている。

当時の香港映画にしては長尺で、主題と関係ない無駄なシーンも目立つのが難点。
高らかに反戦を謳ってはいないが、戦争によって友情が壊れゆく様が生々しい。
ジョン・ウー監督は熱い友情を描く名手であったが、壊れゆく友情と葛藤をこの作品では丁寧に描いた。
「悲惨な現実の前では、友情や絆など脆いものだ。」
そう思わせる悲しい説得力がある。
興業的には奮わなかったため、有名な作品ではないが、壊れてしまった友情の悲しさにズシリと重い余韻に浸れる作品だ。
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