けーはち

さすらいの一匹狼のけーはちのレビュー・感想・評価

さすらいの一匹狼(1966年製作の映画)
3.4
トニーノ・ヴァレリ監督のマカロニ西部劇。カウボーイのコスプレ男たちが伊語で喋ったり、たまにメキシコ人設定の連中(割とアジア人が多い)が突然スペイン語で喋ったり、いかにもな西部劇風の街並みの外の荒野には、ぽつねんと漂う建物がどう観てもヨーロッパ風の石造りだったり、たまに観るとちょっと変で新鮮(何本か観ると大体似たり寄ったりなんだけども)。

ストーリーやキャラクターも、これまた本場の西部劇の爽やかカウボーイが活躍する王道英雄譚に対するアンチ、ひねりを加えた造形になっていて、賞金稼ぎの主人公は弟の仇を追っているという物語だけ明かされ、他はよく分からない、常に余裕かましてニヤニヤしたニヒルな奴で、悪人をワザと泳がせ罪を重ねさせて賞金をつり上げてから捕えたり、狙った賞金首は妻子を餌に一本釣り、雑魚どもはまとめてダイナマイトで爆死させるといったイケメン主人公らしからぬ狡猾さを見せる。逆に銀行破りを生業とする賞金首の男は、家族への愛情と部下に対するカリスマを発揮していたり、そのくせターゲットの銀行の目と鼻の先に妻子を住まわせる間抜け野郎だったり。色んな要素を適当にガチャガチャ突っ込んでいるので散漫。

とはいえ、タイトルバックでアニメーションが入る演出や主題歌の流れる中で主人公が荒野をさすらうシーンの撮影はシビれるかっこよさ。最新式のライフルを持った主人公があえてその武器を捨ててフェアに闘ってみせる一騎打ちの決戦シーンも渋い。