ちろる

あらくれのちろるのレビュー・感想・評価

あらくれ(1957年製作の映画)
4.1
時は大正時代。
頑固ゆえに他人になかなか理解されない女性の波瀾万丈の人生を綴る作品。
高峰秀子がまさしく「あらくれ」!
嫁に行く予定の田舎の旧家が嫌で東京に逃げ出し商屋の後妻に収まるものの、喧嘩が絶えず逃げた北国の旅館で女中となるが・・・
と、兎に角お島には居場所が次から次へとなくなる。
お島はたしかに愛想がなく、言葉も上手くないが働き者で頭が良くとにかく逞しい。高峰秀子さんのぶっきらぼうな女性の演技はいくつかの作品観てきたけど、この特段に可愛げのないお島の事が最後までどうしても嫌いになれないのは、お島がきっと男性社会へのアンチテーゼを人生を賭けて唱えているように見えたからかもしれない。
短気で手が早くて、言葉にオブラートを被せることなんか知らないお島はたしかに男のいう「厄介な女」ではあるのかもしれないがだからどうしたというのか?
好きでもない男と強制結婚させられることに意を唱えて、浮気三昧のモラハラ&DV夫に三行半突きつけ、怠け者の夫をボコっただけ。
それらの男に三つ指ついて我慢をし続ける妻の姿が日本の女の美徳というならば、そんな腐った日本はいらない。
ひたすら頼りにならなくて情けない男たちをこれでもかとあぶり出し、生きる力漲るお島と女をこんなエネルギッシュに際立たせてくれるのは成瀬の静かな傍観のようなカメラワーク。
高峰秀子さんの圧巻の演技と相まって引き込まれます。
次から次へと飽きる事なく波瀾万丈で、まさかあらくれ女の暴れ一代記みたいに終わらせるのかと思ってましたが、さすがカタルシス感じられる女性賛歌。
しとやかな女のヒロインがボロボロになって耐え忍ぶ成瀬映画が苦手な方は是非是非こちらをお楽しみ下さい。
ちろる

ちろる