Ricola

バスビー・バークリーの集まれ!仲間たちのRicolaのレビュー・感想・評価

3.6
明るくてド派手なパフォーマンスが、目で見て楽しいミュージカル映画。
とは言えただその派手さを披露するだけではなく、そのゴージャスさを惜しみなく見せるためのカメラワークの工夫が終始なされている。


例えば、観客席と舞台の境界線が曖昧な演出。区切られてはいるが、ショーの出演者と観客の間の温度差はほとんどなく、同じ空気感を共有していることが明らかである。もしくは、どんどんその境界線が崩されていく場合も見られる。
その後者のようなシーンは、ジャズバー(といっても広い会場)のシーンである。
会場の入口付近でコーヒーをいれている人から、どんどんカメラは会場の中心に向かっていく。後ろの席から人々が座っていくのをカメラが追いかけるように映し、歌い始めのタイミングでバンドまでたどり着く。
そして歌手やバンドの一部は小さな段差を乗り越えて、観客席に侵食していく。
観客が男女一組ずつになって踊り始めるのも、このシーンの演出の一つなのである。
ここでの会場の一体感とその盛り上がりは、出演者と観客の隔たりがなくなることによってもたらされているといっても過言ではないだろう。

また、ブラジルや南米をテーマにしたショーがこの作品の目玉である。
まずはニューヨークの港にたどり着いたブラジル船、コーヒー、そして現地へと連想ゲームのようなパフォーマンス。
他のショーでも、猿からバナナの木へと、これまた連想される結びつきを利用して客を引きつける。
バナナをイメージした衣装を身に纏ったダンサーたちがたくさんのバナナの木のもとで、バナナになりきった踊りを見せる。
巨大バナナを持って行うパフォーマンス。真上からだと木になったバナナの状態に見えたり、バナナをまるで大きな扇子のように振りかざして見せる集団パフォーマンスに圧倒される。さらに舞台の装飾までも利用して視覚的錯覚を起こさせる。
こういった工夫や技巧の凝らした演出は、観ていて単純に楽しい。

夜のガーデンパーティーのシーンでは、ピンクの光を纏った噴水のカーテンを利用した演出がまず目に飛び込んでくる。
ラ・カンパネラの演奏からしっとりと始まり、そこからジャズの軽快なノリと明るいブラジルサンバ、そしてロマンティックなダンスへと移り変わる。
この作品で取り上げられてきた一連のダンスを総復習するかのような流れである。

そして、「ポルカドット」の歌から壮大かつ大胆で美しいパフォーマンスへ。
人間万華鏡のヴィジュアルの衝撃は、この作品の数々の華やかなシーンを凌駕するものである。

ストーリーでは男女の恋愛のすれ違いがいくつか描かれており、陳腐だが笑いも切なさも盛り込まれている。

華やかで楽しいミュージカルシーンに、驚かされときにうっとりするようなそんな作品だった。
Ricola

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