明石です

人喰族の明石ですのレビュー・感想・評価

人喰族(1984年製作の映画)
3.6
残酷すぎて世界31ヵ国で上映禁止になったという、
既視感が凄いけどゴア描写には定評のある食人映画。

あの『食人族』よりも前に元祖カニバル映画を作り、本当は自分のほうが先なんだけどなあ、、と後年まで悔しがっていたというウンベルト・レンツィ監督が、『食人族』ヒットの後に作った食人映画。パチモンでも二番煎じでもないのに、パチモンであり二番煎じでもあるように見えてしまうのはなぜなのでしょう。

アナコンダが小猪を絞殺する様子を長々と映し、今度はそのアナコンダがコモドドラゴンに殺されるさまを映すなど、序盤からかなり趣味が悪い。ガブリと一撃でいかれるのでなく、ゆっくり締め殺されるのがなんともグロテスク、、また亀や鰐の赤ん坊を生きたまま解体したり(どこかで見たことあるなあ)、ピラニアに人間の足を食わせたりと遠慮なしの大盤振る舞い。

一方で設定に関してはとっても詰めが甘く、主人公がジャングルの奥地にやってきた理由が、大学の博士論文で、人喰い族がこの世に存在しないことを証明するためだそう。ひとつの部族を調査することで、食人族が存在することは証明できても、食人族がこの世にいないことの証明には絶対にならない(その土地には存在しないという証明にはなるけど)という、当然至極の論理はおそらく本作では危険思想。そして、そんな大学院卒業間近の真面目なヒロインの連れは、誰とでも寝ちゃうアバズレなヤクの売人!なぜそうなった、、

そんなわけでストーリーの進め方はかなり強引。彼女たちが森の中で会った白人の男がトンデモなくヤバイ奴で、エメラルドを見つけて金持ちになるべく南米の奥地にやってきたものの、見つからないので、コカインでラリった末に、原住民たちを拷問し虐殺。目ん玉をくり抜き股間を切断とやりたい放題。そんな蛮行に手を染めた彼のせいで、主人公たちが巻き添えを喰らってしまうという、血も涙もないお話(本当は血も涙もたっぷりあるけどね)。なんてストーリーだ!!

拷問シーンの気合の入り方はイタリア映画らしくこだわり抜かれたもので、特に「食人族」こと原住民が白人に復讐する際には、股間や腕を切り落とし、そして出血多量で死なないよう傷口を焼くという、まさしく”Make them die slowly”(奴らをゆっくり殺せ)のタイトル通りなやり口。それから彼の脳みそをスライスして皆で食べたり、女性の胸をフックで吊るしたり(ジャケットの写真ですね)と、情け容赦のない描写のてんこ盛り。しかし地味に気になったのは、なぜ調理せずその場で食べるのか笑。ところどころで焼いたり煮たりした方が、映像のインパクトは薄れても、リアリティが出る分かえって怖いと思うんだけどなあ。

原住民に捕らえられた主人公が、泣き叫ぶのをやめて、歌を歌うことで彼らの心を掴み、それが脱出の鍵になるという展開は、彼女が文化人類学者であるという設定を一応は生かしたクレバーなもの(私も食人族に捕まったら真似しなきゃ…)。そして、1人の良心ある原住民に助けられ、生き残った彼女が国に帰って〇〇するという、まさかの『グリーン・インフェルノ』と全く同じラストに。あの映画は『食人族』と本作をドッキングしてたんだ!と知り、謎の感動を得たよ、、

本作が『食人族』の二番煎じかつパチモンに見えてしまうのは、「原住民」の方々の演技のやる気のなさですね笑。『食人族』も『グリーンインフェルノ』も、その辺りが非常に凝っていて、食人族は本物の原住民を記録映画風に撮ってたし、グリーンインフェルノに至っては、原地にいた先住民に食人族の映画を見せて交渉し(ポータブルTVとDVDを持参したらしい)、こういう風に演じてほしいとかけ合ったのだそう。

それに対し本作の「原住民」は、身体中にアカをくっつけたような汚らしいメイクを施しただけの一般人という感じが如実に出ている。動くとボロが出ることを恐れてか、彼らの演技は基本、突っ立ってるか極端に挙動が少ないかのどちらかで、台詞どころか声すら発さず、とにかく不自然、、まあそもそも汚らしいメイクを施しただけで原住民と言い張るのは甚だしい偏見な気がする。周囲を大きな川に囲まれた土地で暮らしてる(という設定の)彼らが、明らかに何日も水を浴びていないような格好してる時点で不自然だし、、笑。
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