垂直落下式サミング

呪怨 黒い少女の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

呪怨 黒い少女(2009年製作の映画)
3.8
本作は、日常のすぐ隣にある呪いの存在を描いてきたこれまでのシリーズとは異なり、霊感の強い霊媒師的なキャラクターがわりとナチュラルに出てきて、呪怨の穢れに触れてしまった女の子を除霊しようとする様子などがイキイキと描かれている。
登場人物が、超常的な作用をともなう方法でもって呪いに対抗していこうとするのは、シリーズのなかでもとりわけ異色な展開であり、ここをもって挑戦的な姿勢を評価することができる。
呪いの解除を扱う関係上、オカルト的な法則に言及していくためセリフがやや説明的になるのがうるさく感じられるが、どの俳優さんも魅力的に撮られているので、なんやかんやで楽しむことが可能。
映像的には、一作目の呪怨が大切にしていた照明の表現主義に原点回帰。オーソドックスな心霊表現ではあるが、画面の黒い部分は異様なほど真っ暗け、その闇のなかで何が起こるのか、その中から何が姿をあらわすのか、そわそわして仕方なくなる。
闇からあらわれる黒い少女はパワー系!霊魂による物理攻撃で、壁ドンで頭蓋骨を粉砕し、めり込む腹パンで殺戮!この世界観、寄る辺なさに安心。もはや、どうしようもないくらいに世界は穢れているのだ。
人物を魅力的にみせている一方で、途中から呪怨らしからぬ普通のストーリードラマになっていくので、不条理な呪いの怖さが減退。お約束のオムニバス形式の時系列シャッフルが辻褄あわせの機能でしかなくなっていて、ストーリー進行の足を引っ張っている。思いきって、起承転結の一本道にした方がよかったのでは?
総評として、『白い老女』はストーリーやアイデアはいいのに見せ方があんまりだったけど、『黒い少女』はヴィジュアルはいいけどストーリーの組み方が下手って感じ。
前編・後編どちらも一長一短で、ふたつまとめて一本とすれば、見応えはそれなり。これがもっと上手くいってれば、呪怨はさらなる広がりを持ち得たかもしれない。
伽椰子&俊雄の佐伯親子に頼らずシリーズをリビルドする方向性はクレバーな試みだったと思うけれど、やっぱ呪怨ハウスが舞台じゃないのは不満でした。あの家だから呪怨なのに!