半兵衛

御金蔵破りの半兵衛のレビュー・感想・評価

御金蔵破り(1964年製作の映画)
3.3
『地下室のメロディー』のモロなパクり作品としてこき下ろされることが多いが、現代フランスの物語を江戸時代へと翻案して(これは脚本の野上龍雄の功績でもあるが)なおかつ片岡千恵蔵と大川橋蔵という二大スターを活かして独自のドラマとして成立させる手腕は見事。冒頭をはじめ江戸時代の便所システムが登場するので結構糞尿が出てくるのが石井輝男監督らしいけど、嫌いな人が多いのはその露悪さもあるのだろうか。

主人公二人が江戸城の金蔵から大量の金を強奪するのを計画することから、用意周到に準備をしていくがちょっとした証拠から様々な人物に把握されていき主要な登場人物が一堂に会していく終盤の語り口も見ごたえ充分。小判が札束やメダルよりも何倍も質量があることを計算して取り入れたラストも元ネタとは違う味わいを残していく(ちなみに野上龍雄は『必殺』シリーズや『三匹が斬る!』で同じネタを使用している)。

江戸城からの強奪の情報を掴んだ悪党のやくざ安部徹やその子分の三バカ待田京介や今井健二、潮健児と石井監督の作品らしく脇役が生き生きとしているのも印象的。持ち前のクールさのなかに盗賊である千恵蔵を捕まえ手柄をたてようという野心をのぞかせる岡っ引き丹波哲郎もいい味。あと片岡千恵蔵の千恵蔵プロや山中貞雄作品などで培われた飄々とした演技の素晴らしさも特筆すべき、山中貞雄の『河内山宗俊』まんまのシチュエーションが登場するのはその影響からなのか。

でも小判の重さからするとあの強奪は途中でばれそうな気もしないでもないけどね。ちなみに江戸城からの小判強奪事件は幕末に実際に起きており(犯人はプロの盗賊ではなく江戸城の仕組みを把握していた市民)、そのときは犯人はすぐに確保できたものの幕府の権力の失墜を象徴する出来事として世間の人に知られていくことに。

あとこの映画の最大の勝ち組は主役二人ではなく、待田京介。
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