パン

顔のパンのレビュー・感想・評価

(2000年製作の映画)
4.4
15年もの逃走劇で有名な殺人犯の福田和子をベースにした映画。 
あくまで参考にしてる程度なので別にノンフィクション映画というわけではない。
この映画の主人公は35歳の引きこもり女性だけど福田和子本人は全然違う人生送ってるものね。 

本作の舞台は1995年の尾崎。
この映画はまるで始まり方が"百円の恋"みたいだ。
ホステスで派手な妹、35歳で引きこもりの姉、母の葬儀後に対称的な2人の姉妹は取っ組み合いの喧嘩をしてそのまま殺人事件に発展する… 
そして妹殺害の容疑で引きこもり姉の逃亡生活が始まる。

人間本気になったら何でも出来るんだな。
あの阪神淡路大震災のシーンで「罰が当たった!罰が当たった!」って絶叫してたのが印象的だ。
まあ殺人事件直後に震災なんて警察の捜査がかく乱されるだろうし、むしろ"天運我に有り"といった感じだと思うが…

「友達っておらなあかんの?」
このセリフめっちゃかっけーわ。
一々会話とかロケーションがハードボイルドだね。

松山刑務所事件を意識してるのかこの映画でも主人公がレイプされる描写がある。
あの事件は日本の犯罪史上の中でも異常すぎる事件だよね… 

新幹線の中での佐藤浩市との出会いと会話が良いわ。
淡い初恋、そして大体初恋は実らない。 

首吊り自殺未遂のシーン本当に見てて辛かった。 
この映画の主人公は逃亡生活によって鍛えられ段々とお洒落になり外交的な性格に変わっていく様が面白い。
しかし逃亡中にも関わらず全然痩せないのは違和感バリバリだったかな…流石に段々痩せていかないとダメでしょ。そこはリアリティがない。

ラストの舞台が瀬戸内海の離島なのも個人的にポイント高い。
その離島で夏祭りしてるのも良い感じ。 
夏の終わりの哀愁、物語のゴールにぴったしの匂いがする。

オチは結構コメディっぽい仕上がりだけど、これだけ一人の人間が生と自由に執着し逞しく成長していく様子は奇跡のようだった。 
まさに火事場の馬鹿力。
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