三隅炎雄

男度胸で勝負するの三隅炎雄のレビュー・感想・評価

男度胸で勝負する(1966年製作の映画)
5.0
昭和初期を舞台にした梅宮辰夫主演の着流し任侠映画。村山新治が監督した。
暗く冷たく沈んだ画面と抽象的で幻想的な三木稔の現代音楽を使って、或るやくざの一家族が任侠道に絡め取られ無残に解体していく様子を、観念的な奥行きを感じさせる極めて禁欲的な文体で描いていく。死の観念に包まれて冷え切ったその画面は時にアートフィルムに近い感触を与える。

映画が描くのは、タイトルが表すような男たちの自己陶酔的な美意識の否定で、それが最後に国家の愚かな歴史と重ね合わされているのが分かる。ここでは出入りの高揚はなく、任侠映画に期待されるかっこよさ痛快さは徹頭徹尾否定排除されている。
残念ながらタイトルで損をしているのか、ほとんど振り返られることもないようだが、これが優れた作家の映画、東映着流し仁侠映画において異形の傑作であることは間違いない。
三隅炎雄

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