くるぶし

天安門、恋人たちのくるぶしのレビュー・感想・評価

天安門、恋人たち(2006年製作の映画)
3.8
監督自身の体験談として1989年の天安門事件を扱ったことや、ごりごりの性描写があることで中国本土では未だ公開されずにいる問題作。
私的に物語の本筋は大学生たちの恋模様であり、あくまでも天安門事件については背景としての見方が正解なのかなと思いました。ただ、そういう描き方をすればラブ・ストーリーとして受け入れてもらえないだろうか…という逃げ道としての監督の思惑がなかったか…というのは気になるところですが笑。

「わたしのよさを知らしめる1番の方法」と割り切り、度々男に身体を差し出すユー・ホンの性に対する奔放さや、その恋人チョウ・ウェイの「結局やらせてくれるなら誰でもいいんかい!」っていう男のsagaとしての虚しさを、生きることの延長として捉えられるスレスレのラインで止める嫌らしさは監督の矜持なのか。うーん、納得はできないけどうまい。
どこまでも低い自己肯定感に翻弄されながら幾年も一人を思い続ける強さと、時を経て見過ごすことができなくなってしまった埋まらない溝。ユー・ホンは今でいうならメンヘラで間違いないが、彼女の情熱の先の孤独さや虚しさにどこか共感してしまう自分もいて、見ている間息苦しくて仕方なかった。人を愛するということは愚かな自分と向き合う作業の延長にあるのかもしれない。

クーリンチェ殺人事件からアジア映画熱が自分の中で高まっているのを感じて、あまり手を出してこなかった中国映画をみようとのことでおすすめしてもらった初ロウ・イエ。セリフを極力排し、映像で登場人物の心情を掬いとっていく手腕、お見事でした。
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